「白根館」山梨県南巨摩郡 ダム底から湧き出る極上のお湯
東京から車で3時間もかからないのに、着いた途端、「遠い!」と口から出てしまった。中央道を甲府南ICで降り、富士川に沿って一般道を40分ほど南下。身延町飯富交差点でV字に右折し、今度は富士川の支流・早川に沿って山間の道を50分ほど北上する。
時間もさることながら、代わり映えしない景色に心が折れた。紅葉の季節ならまだ目も楽しいだろうが、冬は川にゴロゴロ転がる巨岩だけが目につき、殺伐とした気分になる。とてもドライブ気分にはなれない道のりだが、こちとら一人で温泉巡礼の旅の途中。苦行の末にこそ極楽はある……。果たしてその通り、極上の湯はあった。
早川渓谷最奥の集落にある奈良田温泉。昭和32年に早川にダムができた際、ダム底に沈んだ集落に湧いていた温泉を再掘削して復活させた温泉地だ。宿は昭和37年創業の「白根館」ただ1軒だけ。この温泉が最高なのである。