岸田劉生の絵の値段はパトロン次第だった
岸田劉生も初めから絵が売れたわけではない。大正4年、24歳の時に、草土社というグループ展を主催した。中川一政、椿貞雄らも参加し、美術史においては重要なイベントとされる。すでにゴッホやセザンヌから脱皮した、後に「草土社風」といわれる独自のスタイルを確立した展覧会でもあった。
しかしながら当時はこんな様子だった。「入場者はあまりなかった。世評もあまり香しくなかった」「画も勿論売れなかった」(酒井忠康編「岸田劉生随筆集」岩波文庫)と閑散とした展覧会だった。