なぜパチンコ業界だけが「名指しでお仕置き」されるのか?

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 新型コロナウイルス対策で人気沸騰の大阪府の吉村洋文知事(44)が、飲食店など休業要請の段階的な解除を決定した。百貨店や映画館のほかにも、床面積が1000平方メートル以下のパチンコ店も含まれる。もっとも、1000平方メートル以下の小規模パチンコ店は全体の4分の1程度で、多くは規制解除の恩恵に浴せない。

■東京都医師会が緊急謝罪

 あまり大きな話題にはなっていないが、東京都医師会が今月14日、「5月13日開催の記者会見における発言の一部訂正について」と題する謝罪文を公式HPに掲載した。

〈配布資料「都民の皆様と考える、これからのライフスタイル」を説明する際に「ライブハウス、パチンコ、ジムなど今回クラスターが本当に発生した場所をどう運営するか知恵がわれわれにはないが、運営の方々に新しいスタイルを考えてもらいたい」という発言がございました。現在のところ、パチンコ店においてクラスターが発生したという情報はなく、三密の発生しやすい場所という部分で、他の施設と混同しての発言となってしまいました〉

 東京都医師会が直ちに訂正したことについては好感が持てるが、専門家の人たちが「パチンコ店がクラスター」と誤認識した背景を考えてみたい。

「反社の一歩手前」という指摘は当たるのか?

 ご存じの通り、休業要請に応じないパチンコ店への風当たりは強く、大阪府が店名を公表して以降、福岡県や愛知県、東京都などが続々と追随している。営業を続ける店舗をワイドショーが連日取り上げ、八代英輝弁護士による「要請に従ってくれないパチンコ店は、ある意味、反社会的勢力の一歩手前」といった強硬な意見まで飛び出している。だが、パチンコ業界の休業率が他業種に比べ著しく高いという数字は見当たらない。

「業界誌の調査では、GW期間中の休業率は、調査対象8300軒のうち8196軒の98.7%に上ります。パチンコ業界は団体加盟率が異常に高く、むしろ業界として自粛の呼びかけが積極的に行われています」(国際カジノ研究所所長・木曽崇氏)

 警察庁によれば、大阪府にはパチンコ・パチスロが762店舗(2018年末時点)あり、このうち自粛要請に応じなかったのは二十数店舗、同様に東京都は838店舗のうち十数店舗に過ぎない。

 そもそも、自粛を要請する首長たちは「街の様子が緩んでる」(東京都・小池知事)、「ここで緩みが出ては元も子もなくなる」(千葉県・森田知事)と大上段の物言いが多く、これに疑問が出ないのも不思議。まるで感染は国民の気の緩みに原因があり、国民を「言うことを聞かない」家畜として扱っているような印象を受ける。本来、「気を緩めるな!」と鼓舞するのは身内に向けてであり、この場合は「今後も行政として気を緩めずに対策を講じたい」と使うのが正しい用例だ。

■感染対策が「ずるい」にすり替わっていないか?

 もちろん、パチンコ店がまったく「3密」に当たらないとは思わない。クラスター発生の報告がないだけの可能性もあり、危険性は専門家の意見を聞くまでもない。ただ、その危険度の割合は他人と接触するスーパーや通勤電車に比べて高いという知見もない。これに対し、ネットでよく見かけるのが「子供が我慢しているのに遊んでいる人がいる」という意見だ。本来、自粛は感染防止が目的であるはずだが、「こちらが我慢しているのにズルイ」というふうに論点がすり替わっている。

 百歩譲って客が悪いとするなら、全国のホール批判は性急ということになる。従事する22万9441人(総務省「経済センサス活動調査」=16年)の補償もセットで考える必要があり、お仕置きとしての店名公表は行き過ぎだったことになる。

在日企業に独占されているのは本当か?

 一方で「感情」で物事を批判する人の気持ちもわからなくもない。パチンコ業界にはかねて根強い偏見があり、ネットなどではいまだに「ギャンブル依存症者から巻き上げたカネを北朝鮮に送金している」といった噂が飛び交っている。

 では、パチンコ産業と在日韓国・朝鮮企業との関係はどれくらい濃いのか。ホールの7割が在日経営と喧伝されるが、東京大学COEものづくり経営研究センターの調査論文では在日系経営者のホールは1548社(所有者が同じ場合も含む)、機械メーカーは19社のうち在日は7社(37%)。パチンコ業界の7割が在日に独占されているという指摘は当たらない。

「中国経由で北朝鮮に資金が渡っている可能性は否定できませんが、少なくとも日本では外為法で送金がストップされています。今のパチンコ店批判は、かねてあった在日差別がネット右翼たちを中心に形を変えて出ている可能性も否定できません」(ジャーナリストの中森勇人氏)

■パチンコ依存症の人が通っているのか?

 ギャンブル依存症の懸念についてはどうか。テレビなどでも依存症の話題は盛んに取り上げられているが、自粛期間中のパチンコ来店に関するアンケート(ほけんROOM=5月8~9日)によると、緊急事態宣言(東京は4月7日)以降にパチンコ店に行った人の割合はわずか2.2%。営業している店舗の割合とほぼ同じくらいだ。

 お笑いタレントの松本人志が「客はパチンコ店を黒字にするために行く。どういうモチベーションなのか」と首をひねっていたが、では、客はどれくらい負けているのか?

 日本生産性本部「レジャー白書」によれば1回当たりの費用は、平均2870円(=18年)。低貸し台や貯玉・貯メダルが平均を押し下げているのだろうが、これに対しパチンコ店舗の同年の粗利率は16.3%(ダイコク電機調べ)となっている。つまり、1回行くごとに客は1人平均467円負けて帰っていることになる。これを多いと取るか少ないと取るかは判断の迷うところ。ただ、居酒屋に行けば、スーパーで100円前後の酎ハイ缶が350円くらいの値段になる。それでも居酒屋に行くのは、家で飲むより楽しいと感じる人がいるからだろう。

■「違法賭博だから逮捕しろ」は正しいのか?

 最後に「パチンコは違法賭博にあたる」という指摘は本当なのか。これは国会での政府答弁が残っており、「風営法第2条第1項第4号の営業に該当。刑法第185条(賭博罪)に該当しない」「第三者に商品(特殊景品)を売却することもあると承知している」と違法性を認めていない。安倍内閣が「解釈変更」しない限り、この答弁は生きていることになる。

「パチンコ業界が廃れればカジノ誘致がしやすくなるとまでは考えなくていいが、パチンコ業界への一連の批判は、パチンコ業界への偏見を利用した政治や行政側の国民へのガス抜きとも考えられなくもありません」(前出の木曽氏)

 政治家が批判の矛先を変えるため、誰かをスケープゴートにすることはよくある。「#検察庁法改正案に抗議します」のように、「なんだか怪しい」という警戒感だけは持ち続けたい。

【写真】新型コロナウイルス対応の医療従事者に感謝の「青」

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