小杉茂樹さん<2>会社経営と借金の取り立てに苦しんだ過去
「今がいちばんいいね」
小杉さんの奥さんは、最近よく、そしてしみじみ呟くそうだ。小さな建設会社の経営者として浮き沈みがあった小杉さんとともに歩いてきた奥さんもまたたいへんな苦労をされたにちがいない。
「会社が倒産する寸前のころは、とくに妻はたいへんでした。当時、建築関係の借金取りは辛辣でした。私が仕事で出ている昼間に取り立てが来るので、家内は家にいられず、子どもを連れて実家に逃げていたほどでした」
65歳で完全リタイア。息子に土地を用立ててもらい、そこに仲間に手伝ってもらいながら3階建ての家を自ら建てた。
「大工仕事が本職なので、自分で家を建てました。その様子が話題になったのか、完全リタイアしたあとも、ご近所から『お風呂場が寒いので養生して』『屋根をふき替えたいから紹介して』といった細かな依頼が舞い込みました。80歳までは、できる範囲でちょこちょこ働いていました」