中学受験は大量暗記型から思考型に 変化にどう対応すべき

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 少子化にもかかわらず、中学受験は都市部を中心にますます過熱しています。多くのお子さんが進学塾に通うのは、志望校の入試問題に対応できる応用力を身につけるためです。学校ごとに特色があり、毎年、出題傾向が明確になっているところがほとんどです。

 入試問題は、「こうしたお子さんに入学してほしい」という学校からのラブレターだと私はとらえています。

 近年、入試問題の出題傾向が、大きく変わろうとしています。現在も、進学塾で行われる受験対策は、短い制限時間の中で大量の問題を解くのに必要な知識、処理能力を養うことに主眼を置いたものになっています。それが少し変化を始めたように感じています。

 変化のきっかけは、大学入試改革です。今年、大学センター試験が大学共通試験という名称に変わり、今後、出題される問題は「思考力・判断力・表現力」重視の方向がより強くなっていくはずです。
 中学校の入試問題は、大学入試改革に先取りする形で変化が起ころうとしています。これまでの暗記偏重型から、思考力、判断力、表現力を問われるものにシフトしていく、ということになります。

 この変化に進学塾はどう対応するのか、受験生はどうすれば対応できるのかについて、お話ししていこうと思います。

 ◇  ◇  ◇

 開成、麻布といった最難関校では、何十年も前からすでに思考力、判断力、表現力が問われる問題が出題されています。最難関校を見本に入試問題を改革していく学校が、今後増えていくと思われます。

 慶応普通部など記述問題を出さない学校も一部ありますが、ここ最近では、栄光、聖光といった神奈川のトップ校や、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張、海城、豊島岡女子、浦和明の星、芝、本郷、世田谷学園、吉祥女子、鷗友学園といった進学校で、この傾向を強めています。

 算数でいえば、つるかめ算や倍数算といったタイプ分けができる特殊算の出題が減り、特定の公式だけでは答えが導き出せず、その場で考えたり、書き出したりしないと解けない問題が増えていくでしょう。理科にもこの傾向が出ていて、高校レベルの生物の問題が、小学生でも理解できるやさしい言葉に言い換えた長文で出題されたりしています。

多くの子供が5年生で壁にぶつかる

 大手進学塾もこの変化に対応しようとしているところで、6年2学期から始まる志望校別日曜特訓のテキストの改定、指導法の研究を行っているところが多いようです。

 現在、中学受験を控えるお子さんに多いのが、公式を使ったり、定型的な解法を利用する問題は解けるのに、それ以外のものが出題されると、途端に解けなくなるタイプです。

 例えば、4年生で出される等差数列という問題があります。これは植木算の考え方を利用すれば、解くことができます。しかし、多くの塾では、等差数列を公式で教えています。そのため、基本問題は暗記さえすれば解答できてしまうことになります。解答は出せても、それに至るプロセスや問題の本質が理解できていないため、少し応用した問題や発展的な問題が出されると、解けなくなってしまうのです。

 このように、公式や解法の暗記だけで問題を解く習慣が身についてしまうと、多くのお子さんは、5年生になってから壁にぶつかることになるのです。これが、大量のくり返し学習をしても、学力が伸びない原因なのです。

 限られた制限時間の中で素早く解くための工夫や公式を開発し、子どもたちに教え込んでいく努力を進学塾は続けています。

■創意工夫が中堅校の試験でも問われる

 例えば、年齢算はこれまで自分で線を引いて視覚的に答えを導き出していく線分図が用いられてきました。しかし、ここ最近は、①解法といって、x、yの代わりに①や②を用いて機械的に解いていくやり方が主流になりつつあるようです。この解き方は結局、連立方程式と同じ思考に立つものです。

 機械的に答えを導き出す方法だけを身につける学習を続けていると、応用問題や初見の問題が解けません。

 算数の醍醐味は、限られた手法を駆使し創意工夫をして、やっと解けたときに味わえる快感です。算数を教える者が公式や方程式を扱うときは、それがブラックボックス化しないよう細心の注意を払う必要があると考えています。また、多くを教えすぎない自制心も大切です。

 今後、難関校の入試で大切になる「思考力・判断力・表現力」は、日々の創意工夫によって鍛えられるものだからです。

 一方、進学塾の言い分にも耳を傾ける必要があります。

「定型的な問題は、公式や便利な解法を用いて解き、試行錯誤が必要な問題に時間を残すため」

 という説明です。

 確かに、大手進学塾の上位1〜5%の子どもたちは、「一を聞いて十を知る」ことができます。公式の機械的な利用と、創意工夫を使い分けることができる子どもたちです。

 これまでのように、最難関校だけに要求されていた創意工夫する力が、難関校や中堅校にも要求され始めています。塾側も、塾に通わせている親側も、こうしたところに注意が必要になってきたといえるでしょう。

▽西村則康(にしむら・のりやす) プロ家庭教師・名門指導会代表、中学受験情報局主任相談員、塾ソムリエ。受験学習を暗記や単なる作業だけのものにせず、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で切り込んでいく授業は、親からの信頼も厚い。『わが子が勉強するようになる方法 2500人以上の子どもを超有名中学に合格させた「伝説の家庭教師」が教える超実践的な38のルール』(アスコム)、『中学受験! 合格する子のお父さん・受からない子のお父さん』(ウェッジ)『難関校合格のすごい勉強習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。

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