岩成政和
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岩成政和鉄道史学会会員

1963年生まれ。鉄道会社に勤務し、営業課長などを歴任。鉄道雑誌などに多数寄稿。好きな車両は食堂車、寝台車。

<下>田町・品川界隈の車両基地を整理 不動産開発の行方は

公開日: 更新日:

「高輪築堤」が見つかったJR東日本高輪エリアの再開発地だが、この計画は2015(平成27)年にスタートした上野東京ラインが密接に関係している。

  ◇  ◇  ◇

 上野東京ラインの開通、すなわち上野駅止まりだった高崎線・宇都宮線の電車と東京駅止まりだった東海道線の電車をスルー運転とするため、JR東日本では神田付近で新幹線の高架の上に上野東京ラインの高架を乗っけるという難工事を行った。

 そこまでして上野東京ラインを実現させようと頑張った理由は、鉄道事業本来のメリットもいくつかあるのだが、大きな目的の中に、この田町・品川界隈の車両基地群を大幅に整理して不動産開発を行うということがあった。

 東海道線の電車が東京、高崎線・宇都宮線の電車が上野で折り返していた時代、車両の整備やラッシュと昼間の本数調整のために都心で電車を休ませる基地が必要であり、東海道線では品川、高崎線・宇都宮線では尾久の施設が利用されていた。また、ホームで折り返す場合には折返し作業が必要であり、最低でも10分程度の折返し時分が必要であった。

 上野東京ラインの運行が始まったことで、東京と上野の折り返し時間10分ずつが不要となる。つまり、20分が走行(=収益活動)に振り向けられることになる。そして品川や尾久の電車休憩線がほとんど要らなくなる。

■歴史を大切にする国民や民族は滅びない

 そう、狙いはここだ。田町・品川界隈という都心の一等地において最小限の電車休憩線だけを片隅に残す。ブルートレインがなくなり、遊休土地になっていた客車基地や機関車基地、電車休憩線をまとめて更地化して開発すれば、上野東京ラインの工事費もおつりどころか…。もちろんこれには、外部の素人のやっかみも入っている。

 その過程で出土したのが「高輪築堤」の石垣だった。今のところ、JR東日本では120㍍程の部分を残し、残りは記録保存(記録のみを残し現物は壊すことをいう)を予定しているが、最終決定はしていないとしている。いずれにしろ、当初の計画よりビル群の総容積などに影響が出ることは避けられない。

 たかが石垣ではあるが、専門家によるとその石積方法の様式などから細かい時代考証や技術水準の検証なども可能であるという。「過去の廃物」「専門家しか喜ばない遺構のために未来の収益を無にするのか」という意見は投資家としては正しいが、歴史を大切にする国民や民族は滅びないということも指摘したい。

 JR東日本は私企業である。国には利益を保障する形で、できるだけ大規模に保存する方法を検討して欲しい。鉄道150年は来年だ。開業時の遺構の保存に関係各所の英断を期待したい。(おわり)

【高輪築堤】1872(明治5) 年に我が国初の鉄道が開業した際に、海上に線路を敷設するために築かれた鉄道構造物。明治政府は、1869(明治2) 年に、首都東京と開港場であった横浜を結ぶ約29キロの鉄道建設を決定。しかし、高輪周辺の土地は国防上必要であるとの理由で兵部省が鉄道当局への引き渡しを拒んだため、本芝から高輪海岸を 経て品川停車場に至るまでの約2・7キロの区間は海上に築堤を建造し、その築堤の上に列車を走らせることに。工事はイギリス人技師エドモンド・モレルの指導のもとで民部省鉄道掛、のちに工部省鉄道寮が担当し、石垣の石材には台場や高輪海岸の石垣等が使用されている。(港区教育委員会のホームページより抜粋)

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