全国初・山梨県が自宅療養者に「給付金3万円」地元の評判、狙い、効果は?
手応えはまずまずのようだ。
オミクロン株の感染急拡大を受け、山梨県は医師の診断後、感染者が自宅で療養する「ホームケア」の対象をこれまでの40歳未満から、ワクチン接種2回を済ませた40~59歳に拡大した。
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自宅療養者には1人3万円の給付金を、病院や宿泊療養施設にいったん入所後、自宅に戻った「退所後ケア」の患者には、同1万5000円を支給する。予算9億8200万円は専決処分した。
自宅療養者に給付金を払うのは、全国で山梨だけだ。
制度の「狙い」について、県感染症対策グループホームケア班の担当者がこう説明する。
「感染が拡大する前から準備していました。無症状者や症状が極めて軽い方は宿泊療養施設に入所するといろいろ制約もあり、窮屈な思いをします。住み慣れた自宅で療養する方が精神的負担も軽く、回復面も含めていいのではないかと考えました。まだ細かな設定ができていませんが、給付金の支給を条件に外出を控えるようお願いすることも検討しています」
生活に不安なく治療に専念できる
山梨県では23日、長崎幸太郎知事が「ワクチンの2回接種を終えていない方は、不要不急の外出や移動の自粛を要請します」と発言し、「差別につながる」と批判が相次いでいた。しかし、この給付金制度は県民に歓迎されているようだ。患者はオンラインで診察を受け、後は自宅で療養に専念する。
「ここにきて医療資源もかなり逼迫してきました。ホームケアの場合、一切、医療機関を使いませんので、本来、患者さんが受けられるサービスに相当する部分を給付金という形で支給します。それを活用して自宅での療養に専念してもらおうという趣旨です。対象者には制度を説明して同意いただきますが、その率が高いことから、好意的に捉えてくれているのではないか。効果ありとみています」(前出の担当者)
無症状や軽症患者に自宅療養を促すことで、重症者や重症化リスクの高い患者を優先的に入院させることができ、その結果、病院や保健所の負担が減る--という効果を期待しているようだ。
東京・北区のJR赤羽駅の自転車駐輪場では25日、区から業務委託された職員の男性(79)が新型コロナに感染していることを知りながら、3日間勤務していたことが判明。理由は分かっていないが、生活がかかっているため、感染を隠してでも働かなければならない労働者は少なくない。
金銭的保証があれば無理に働かなくても安心して治療に専念できる。給付金をもらえるのなら、しばらくは家でおとなしくしようと思う無症状者もいるかもしれない。効果次第では、他の自治体も検討する価値があるかも。