広がる週休3日制で懸念される「働かなさすぎ問題」…賃金は低いままなのに

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♪テツヤ 言うとくがな 人さまの世の中出たら 働け 働け 働けテツヤ 休みたいとか遊びたいとか そんなこといっぺんでも思うてみろ そん時は死ね……

 ◇  ◇  ◇

 海援隊が1973(昭和48)年に発表した「母に捧げるバラード」のセリフ部分だが、「死ね」という表現が現代では過労死をイメージさせると賛否があるという。

 大企業を中心に週休3日を採用・検討する企業が増えている。

 SOMPOひまわり、SMBC日興証券、みずほフィナンシャルグループらに加え、パナソニックも今年度中に導入する方針だ。

 政府も多様な働き方の一環として後押しする週休3日制だが、そもそも日本は諸外国に比べて「休日」が少ないのか?

「労働基準法で、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならないと定めています。また1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならないとしています」(特定社会保険労務士の稲毛由佳氏)

 1日8時間勤務なら週5日勤務が限度となって週休2日となる。だが、週6日勤務でも1週間40時間以内に抑えれば、週休1日でも問題はない。今では学校も企業も週休2日が当たり前の世の中だが、武田鉄矢が「母に捧げるバラード」を歌っていた頃は週休1日が基本だった。それが1987年に労働時間の規定が「週48時間」から「週40時間」に改正されたことで、今や83.5%が週休2日、それ以下は8%にまで減ってきている。

年間休日は労働者平均で116日

 では、実際に年間休日はどれくらいあるのか。厚労省「就労条件総合調査」によると、2020年の年間休日数は企業平均で110.5日、大企業の社員が押し上げる格好になる労働者平均で116.1日。この年の土日(週休日)は104日あり、夏季と年末年始の特別休暇を加えた数字がこれとなる。さらにこの年間休日にカウントされない忌引休暇や有給休暇を加えると、年間トータルではもっと日本人は休んでいることになる。

 16年のデータでは、日本の年間休日数は138.2日。イギリスやフランスの137日より多い。

 つまり、日本人は諸外国に比べても結構、休んでいる方なのだ。

■「キーエンス」は有給休暇を除いて128日

 では、休日の多い主な企業を挙げてみよう。給料が高い分、仕事も超ハードで知られる「キーエンス」は年間128日。「郵便局」も同じ128日で、トップレベルで休みの多い会社だ。次に「パナソニックグループ」の126日、「キッコーマン」「ソフトバンク」「日本電産」などが124日で続き、「ローソン」「ファミリーマート」も120日と、規定通りに休めれば多い方に入る。一方、国籍を理由にした採用排除や幹部の不適切発言で印象が悪化している「吉野家」は年間110日。このレベルの休日数になると、週休2日以外は年に数日の休みがあるのみで、年間16日もある「祝日」はほぼ休んでいない計算になる。

■2020年の総労働時間は1598時間

 いずれにせよ、大企業の社員の多くは、有休などを加えた年間の休みで、実質的に“週休3日”になっていると言えるだろう。実際、OECD調査で日本人の年間労働時間は、コロナ前の2017年は1710時間だったものが、2020年は1598時間と112時間も減っているのだ。

 こうなると、日本人の「働きすぎ」より、「働かなすぎ」の方が問題という気にもなってくる。日本が以前のような経済大国ならいざ知らず、先進国の中でも低賃金なのだから、週休3日などトンデモないという気がする。さらに言うと、大企業の週休3日は、ワークシェアで従業員に支払う賃金を抑える方策にも思える。

「数字上は日本人は休みすぎと思われますが、労働時間に含まれないような“拘束時間”がまだ多い。また、1週間に40時間の労働時間を週休3日で32時間に減らしても、その分の労働生産性が減ってしまっては意味はありません。32時間で40時間分の働きを維持する効率的な働き方が必要です」(前出の稲毛氏)

最大150日まで自分で年間休日を選べる会社

 労働時間が減って喜んでいても、給料まで減らされてしまっては元も子もない。厚労省「毎月勤労統計調査」によると、今年3月の労働者全体の所定内労働時間は148.6時間で前年から2%減っているが、実質賃金は前年比マイナス0.2%なのだ。

 マイナビが今年2月に「週休3日」を利用したいかと聞いたところ、勤務日の減少に比例して収入も減るのなら、78.5%の人が「利用したくない」と答えている。タダでさえ給料が減っているのに、これ以上減らされては暮らしていけないというのが本音だろう。

 そこで注目されるのが、通信インフラサービスで急成長している「オールコネクト」(福井市=従業員約780人)という会社の休日だ。

「2020年7月から5段階の年間休日を自由に選択できる『年間休日選択制』をスタートさせています。休日数は従来からの107日と120日に加え、130日、140日、150日の5つから選べます。現在は107日を選ぶ人が約50%、120日が43%、残りがそれ以外となっています」(オールコネクト広報担当者)

 意外にも週休3日に相当する150日を選択する人は3%と少ないが、制度が始まって約2年しか経っていないことも背景にありそうだ。それでも、「子供の成長をサポートしたい」という理由で「107日」から「130日」に変更した30代男性社員のような例も出ているという。

「反対に年間休日120日で入社した女性社員が、『もっと働きたい』と107日に減らしたケースもあります。この女性社員は、自分自身の状況の変化に合わせて、今後も柔軟に年間休日を変更していく予定のようです」(前出の担当者)

 一律に休みを決められるより、自分で選べるのは大きい。他の企業にとって参考になりそうだ。働いて稼ぐことばかりが人生ではないが、休んでばかりでは日本はもっと没落していくかもしれない。

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