(60)大手紙の夕刊はベトナム人奨学生だけでなく新聞販売所も苦しめている
都内の朝日新聞販売所で働いていたベトナム人のキエット君(21)は今年4月の大学進学に際し、「新聞奨学生」を続けるかどうか迷った。
「(留学生に許される)週28時間のアルバイトでは、大学の学費を払えば経済的に苦しい。その点、奨学生を続ければ奨学金がもらえます。でも、新聞配達の仕事をすれば、勉強する時間が取れなくなってしまうのです」
結局、彼は奨学生を辞める決断をした。
「大学の近くにある販売所に移って働けば、日本に来た頃のように、また長時間の仕事をやらされるかもしれません。違法就労は二度と嫌です。せめて夕刊の配達がなく、朝刊だけの仕事だったら奨学生を続けていたのですが……」
夕刊を廃止し朝刊だけに──これはキエット君のようなベトナム人奨学生のみならず、販売所の願いでもある。
■収入は1つの契約で「月300円」
朝日は「朝夕刊セット版」の購読料を月4400円、夕刊のない地域の「統合版」を月3500円に設定している。一方、東京のように夕刊のある地域で朝刊のみを購読すると、販売所によって料金の差はあるが、月4100円程度だ。夕刊も配達してもらう場合と300円ほどしか変わらない。つまり、1つの契約につき「月300円」というわずかな収入を得るために、販売所は夕刊配達の人員が必要となるわけだ。結果、ベトナム人らに違法就労を強いる状況が生まれるのである。