コロナ第8波とインフル拡大なら発熱外来はパンク…低リスクの人の自宅療養「虎の巻」

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 気温の低下とともに、全国的にコロナ感染者数が増えていて、第8波がひたひたと押し寄せている。今シーズンはインフルエンザ感染も拡大が予想される。そこで厚労省は、発熱外来の逼迫を避けようと、低リスクの人を対象に市販薬を用いる自宅療養をPRする。このダブルパンチを、どう乗り切るか。

 ◇  ◇  ◇

 北海道では、すでに夏の第7波を超える感染者数を記録。全国に先駆けて第8波が襲来した。その流れがじわじわと全国にも波及。東京では、1週間平均の新規感染者数が25日時点で9434人と前週比113%。大阪は同150%と急増している。第8波の全国拡大は、時間の問題とみられる。

 一方、季節性インフルエンザについては、感染者数が10月から急速に増えている。厚労省が集計する定点報告数は、今月20日までの1週間が前週比134%だ。ほぼ“無風状態”だった過去2シーズンに比べると、実に25~27倍に上る。感染急増エリアでは、季節性インフルによる学級閉鎖も相次いでいる。

 政府は、同時流行が起きたケースの1日の患者数を試算。コロナは最大45万人で、インフルは最大30万人。合計75万人に上る。コロナ第7波のピーク時で感染者数は約26万人だった。試算通りなら、あの悪夢のようなときの3倍もの発熱患者が全国にあふれることになる。

 そんな発熱患者が医療機関に一気に押し寄せると、発熱外来がパンクする。そこで厚労省は、重症化リスクの高い人に受診を優先するよう、リスクが少ない人には発熱時に市販薬での自宅療養を呼びかけているのだ。では、どんな準備をしておけばいいのか。医薬情報研究所エス・アイ・シーの医薬情報部門研究者で薬剤師の堀美智子氏に聞いた。

■NSAIDsで注意すべき持病とは?

「まず重要なのは、解熱鎮痛薬の選び方です。コロナ禍になった当初、アセトアミノフェンが推奨され、その後、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も使用されるようになりました。今ではどちらもコロナによる解熱に使われていますが、より安全性を重視するなら、アセトアミノフェンがおすすめです」

 アセトアミノフェンはナロンなどの商品に含まれる成分だ。コロナ禍において、ドラッグストアで品切れが続出したことでも知られる。一方、NSAIDsには複数の成分があり、ロキソニンやボルタレンなどに含まれる。何が違うのか。

「アセトアミノフェンは成人はもちろん、15歳未満の小児や乳幼児、妊婦、授乳中の女性にも使われていて、NSAIDsより比較的安全性が高い。NSAIDsで問題となる胃の粘膜障害を起こすリスクも少ない。NSAIDsは15歳以上が適応で、その胃粘膜障害のほか、腎機能の低下やアスピリン喘息などのリスクもあります」

 胃炎や胃潰瘍などで胃の粘膜が荒れている人、腎臓の病気がある人は、NSAIDsを避けて、アセトアミノフェンを選ぶ。アスピリン喘息は、NSAIDsを服用して1時間ほどで生じる喘息で、軽症なら喘息と鼻づまり、重症だと呼吸がつらくなる。成人喘息の10%は、これが原因といわれる。当然、NSAIDsはダメだ。

 こうしてみると、NSAIDsはポピュラーな商品が並ぶが、中高年の持病を悪化させる恐れが高い。

■アセトアミノフェンは酒との相互作用に注意

 気になるのが、インフルとの兼ね合いだ。

「インフルエンザの解熱で推奨されるのが、アセトアミノフェンです。一方、NSAIDsはインフルエンザ脳症のリスクが指摘されていますから、インフルエンザとの関係でもアセトアミノフェンが無難でしょう」

 ただし、アセトアミノフェンにも、弱みがあるという。肝機能がよくない人やアルコールをたくさん飲む人がアセトアミノフェンを服用すると、肝機能障害が悪化しやすく、服用後に肝不全を起こすこともある。1999年に世間を驚かせた埼玉・本庄保険金殺人事件で明らかになった手口も、市販の風邪薬に含まれるアセトアミノフェンと酒を一緒に飲ませた末の犯行だった。

 コロナやインフルで苦しんでいるときに酒をあおる人はいないだろうが、たとえば酒を飲んだ帰りに「何となく寒けがするから念のため薬を」といったときにアセトアミノフェンは、避けた方がいい。

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