著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

“私大医学部御三家”の序列に異変…順天堂が大躍進で慈恵医大をロックオン

公開日: 更新日:

「前門の虎、後門の狼に挟まれジリ貧状態」と話すのは東京慈恵会医科大学(通称「慈恵医大」)の内科系の元教授。142年前に開校した名門で慶応大、日本医科大とともに、私大医学部御三家に数えられる。前門の虎は慶応。「背中はあまりに遠い」と嘆く元教授も実は慶応医学部出身だ。

 私大医学部の偏差値ランキング断トツの慶応との差は、国公立大と同時に合格した時に現れる。慈恵医大の23年度の合格者数上位は桜蔭、開成、渋幕、聖光、麻布と超難関中高一貫校で占められているが、「国公立大に逃げてしまうケースが多い」(医学部予備校スタッフ)という。

「一方、慶応との同時合格で国公立を選ぶ確率が高いのは東大、京大、東京医科歯科。あとはアクセスなどの条件にもよるが、慶応を選ぶ合格者のほうが上回る」(同)

 慈恵医大が慶応に比べ人気がない理由として、どちらの環境も知る元教授が感じるのは学閥の強さの差だ。

■「ジッツ」と呼ばれる慶応関連病院の多さ

「日本の医学界を牛耳る東大に対抗すべく誕生した慶応医学部は、新しくできた私立医科大に数多くの教授を送り込んできた。それだけにジッツ(植民地)と呼ばれる関連病院も多く、卒業後や研修後の行き先が豊富なんです」

 歴史はありながら、慈恵医大はそうしたジッツをあまり持っていない。私大医学部ネットワークの頂点に立つ慶応には歯が立たないというのが元教授の偽らざる見方だ。

 上を追い越すことを考えるよりも、気になるのは“後門の狼”のほうだ。しかし、それは御三家のもう一角を占める日本医大ではない。かつては日本最古の私立医学校である日本医大が格上だったが、03年に逆転した。

「慈恵医大は入学金を日本医大の半額に下げ、国立大と同じだった入試日を変え、併願できるようにした。すると偏差値が急上昇し、日本医大を上回り、以来21年間、私大2番手の位置を守っているのです」(前出の予備校スタッフ)

 日本医大に代わって、慈恵医大にとって狼というべき脅威になっているのは順天堂大である。「偏差値はまだわずかに慈恵医大が上だが、実質的にはほぼ並んでいる」(同)というほど、順天堂大の躍進が目覚ましいのだ。

 両校には共通点がある。理事長による長期ワンマン体制が築かれている点だ。慈恵医大の栗原敏理事長は20年間、順天堂大の小川秀興理事長は19年間、その座にある。

「学費の大幅値下げで私大最安値(現在は2位)を実現するなど、順天堂の小川先生の繰り出す改革はことごとく当たっている。対する栗原先生は周囲をイエスマンで固め自己保身にばかり走り、前向きな方針を打ち出せていない」(元教授)

 創立者の高木兼寛医師は「病気を診ずして病人を診よ」と唱え、全人教育に力を入れた。かつての栄光を取り戻すには、思い切った改革が必要なようだ。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景