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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(19)「前のクルマについて行って」と言われたけれど…なんと相手はマイバッハだった

公開日: 更新日:

「おまえのパワーを見せてやれ」と後続の私を挑発するように猛スピードで走り続ける。「前のクルマについて行って」とは言われているが目的地は聞いていない。私のクルマには当時カーナビも装備されていなかった。見失っては大変と必死にハンドルを握る。追う相手は「マイバッハ」だが、当時私のクルマは「クラウンコンフォート」「クラウン」とは名ばかりで、タクシー専用モデルで自家用高級車の「クラウン」とは性能面ではまったくの別物。パワーも足回りの安定感も、先を行くクルマとは月とスッポンどころではない差がある。

「車のハンディをプロの技術で」と言えばかっこいいが、とにかく必死でハンドルを握り、ペダルを踏み続けた。

「マイバッハ」が首都高速の飯倉出口で降りたときは正直ホッとした。ほどなく六本木の高級クラブの前に着いた瞬間、ちょっと大袈裟だが、私もクルマも“息も絶え絶え”状態であった。その甲斐あってか「お釣りはいいから」とお客は1万円札を差し出してくれた。私は「おまえもよく頑張った」と廃車間近の「クラウンコンフォート」に初めて“愛車”のような感情を抱いたものだった。

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