精神科医・和田秀樹氏が語る「老害」を乗り越える方法

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■長く楽しく働きづつけるコツ

 では、人はなぜ不適応思考に陥ってしまうのでしょうか。それは、自分への要求水準が高い、いわば、頑張り屋さんだからです。自分への要求が高いぶん、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合は自分自身を「駄目な人間だ」「情けない」と否定的に捉えてしまいます。

 そんな患者さんのお話を聞くとき、私は別の視点を持つようアプローチします。「別の視点を持つ」というアプローチは、「認知療法」の基本的な考え方のひとつです。認知療法とは、本人が自分の思考の偏りを「認知」することで、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法によって、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方の癖を変えることが期待できます。

 「別の視点を持つ」トレーニングは、一人でも行えます。たとえば、誰かの噂話やテレビや新聞、雑誌などで見聞きしたことをうのみにするのではなく「そうかもしれないけど、別の見方もあるだろう」と異なる考え方や可能性を探すのです。

 私が卒業した東大の医学部には「東大医学部を出たからには、大学教授になるべき」という常識がありました。あくまで「東大医学部」という「ムラ社会」においてのローカルルールに過ぎません。このように、特定の組織内(コミュニティ内)での「常識」なんて恣意的なものでしかないことが多いのです。

「かくあるべし」が深刻化すると、自分の心を締めつけすぎて壊してしまいます。また他人にもその「常識」を押しつけたくなってしまいがち。すると「あの人は、ルールに厳しい人」などと敬遠されてしまう危険性もあります。

 ですから第二の人生こそ、いろいろな思い込みを外して、自分にも周りにも寛容になりませんか。そんな自由さ、心の伸びやかさこそ、あなたの前頭葉を活性化させることにもつながるでしょう。

和田秀樹(わだ・ひでき) 精神科医1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院精神科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医、臨床心理士、受験アドバイザー、映画監督、ラジオパーソナリティー、youtuberなど多くの顔を持つ。医師として認知症予防や健康寿命の延伸に携わってきたことをきっかけに、仕事を通じて自分らしく輝き続けるためのノウハウを紹介。著書に『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『受験は容量たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ』(PHP文庫)ほか数々のベストセラーがある。

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