坂口健太郎似の男「一緒に住もう」の言葉に隠れた甘いワナ。欲しいのは家政婦だよね?
将来の夢を語る姿に抱いたある予感
「出会いは、街コンでした」そう話してくれたのは、ユカリさん(仮名・31歳)。大学時代の友人に誘われて、気乗りしないまま参加した日のことだった。
会場は都内のおしゃれなダイニングバー。軽食をつまみながら、男女が5分ごとに席替えしていく、いわゆる“回転式”の街コン。今回は“同棲”にまつわる男女のエピソードをお送りする。
その中で、ひときわゆるい空気をまとっていたのが、ミナトさん(仮名・35歳)。話し方が柔らかく、笑いのツボも合う。
第一印象は「ちょっと頼りなさそうだけど、悪い人ではなさそう」。職業は飲食業界のフリーター。髪型や服装に清潔感があり、「坂口健太郎っぽいって言われます」と笑う姿に、少しドキッとした。
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会の終了後、彼の方からLINEが来て、後日ふたりで食事に行くことに。1軒目は彼が選んだ駅近のイタリアンバル。ワインが好きだという彼のセレクトに、悪い気はしなかった。
会話の中心は彼の“将来の夢”だった。「いつか自分の店を持ちたいんだ。今はそのために修行中」
夢を語る姿勢には感心したものの、やたら自分の話が多い。「わかる、俺もさ」と話をすぐ自分に戻す。話し上手というより、聞き下手かもしれない——そんな予感がよぎった。
突然の同棲の申し出
とはいえ、夢を持つ人は素敵だと思ったし、2回目のデートにも応じた。彼は手作りのサンドイッチを持参し、近所の公園でピクニック。料理もできるんだ、と少し好感度が上がった。
ピクニック中も、彼は自分の過去を語り続けた。元カノとの話も交えながら、「あいつも最初は支えてくれてたけど、文句ばっかになってさ」と漏らした一言に違和感を覚えた。
そして迎えた3回目のデート。カフェでランチをしていると、彼は唐突にこんなことを言い出した。
「男もさ、今の時代いろいろツラいんだよね。仕事とかさ…」
職場の人間関係に疲れているらしい。愚痴をひと通りこぼしたあと、彼は少しトーンを落としてこう続けた。
「実はさ…いっそ一緒に住まない? 同棲すれば家賃も浮くし、俺も楽になるし」
「面倒を見てくれる人探し」では?
戸惑っているユカリさんに、彼はさらにこう畳みかける。
「ユカリちゃんって、事務職で安定してるし、優しいし…支えてくれたら、すごく助かるなって。炊事とか掃除もお願いできたら嬉しいな」
え、まだ付き合ってもいないのに? 家賃? 支え?
あまりに突飛な提案に言葉を失った。これって「恋人になりたい」んじゃなくて、「面倒を見てくれる人探し」では?
さらに彼は笑いながらこう続けた。
「俺、片付けるの苦手でさ~。ユカリちゃん几帳面そうだし、料理もできそうだから、家のことも安心できそうっていうか…」
つまり、私は“無料の家政婦兼ルームシェア相手”。しかも心の支えにもなり、家賃まで浮く理想的な存在——そんなふうに思われていたのだろう。
時代錯誤な価値観に生きる男
「悪いけど、まだそういう気持ちにはなれない」とやんわり断ると、彼は拍子抜けするほどあっさり「そっかー、残念」と返してきた。
その後、彼からの連絡は一切なくなった。まるで「条件に合わないなら用はない」とでも言われたようだった。
後日、共通の知人を通して、彼がこんなことを言っていたと耳にした。
「最近の女って、全然尽くしてくれないよな。昔はもっと支えてくれる子、多かったのに」
時代錯誤もここまでくると、もはや清々しい。
依存関係に愛は芽生えない
今や女性だって、自分の人生を大事にし、自立して恋愛をしている。尽くすことが前提で、他人に甘えようとするのは違う。
もちろん、助け合える関係を築くことは大事。でもそれは、“お互いに”努力してこそ成り立つもの。最初から依存ありきの関係に、愛なんて芽生えない。
「夢を追うのは自由。でも、その夢を誰かの“善意”に背負わせようとするのは違うと思う」
そう語るユカリさんの目は、少しだけ厳しかった。でも、それは過去を見つめ直したからこそ持てた、確かな強さでもあった。
(おがわん/ライター)