(1)社長が独白!創業90年の米屋はなぜ閉店せざるを得なかったのか
「米屋ですが、米ありません」──。店頭に張り出されたポスターは衝撃的だった。メディアでも大きく取り上げられ話題になった京都府舞鶴市の「まつもと米穀」。創業90年の老舗米屋は「令和のコメ騒動」の影響でコメを確保できなくなり、今年3月、一時的な閉店を強いられた。半年を経て、2日から営業を再開する。閉店は、良質な商品を仕入れられなくなった上での苦渋の決断だった。この時、何が起きていたのか。
「令和のコメ騒動」が始まった昨年8月、いち早く新米が入荷した当店では、5キロ2600円(税込み)で販売を開始した。仕入れ価格上昇のため薄利ではあったが、コメ不足解消に一役買いたい一心で連日精米機をフル稼働させた。来店客は急増。それでも当初の仕入れ計画では充足するはずだった。また、10月半ばごろには各地からの新米も出揃い、客足は次第に落ち着きを見せた。
■契約反故にされ、備蓄米も入荷のめど立たず
一方、その頃産地では異変が起こり始めていた。買い取り価格の急激な上昇である。農家から多く耳にしたのは、飲食店関係者からの取引要請の急増だった。そうした新参の買い手からは、相場を大幅に上回る価格提示があり、当店契約農家の中でも「断り切れなかった」と売るケースが続出した。ある農家は、「売ってくれるまで帰れない」という圧力に屈したとわびた。