「猫マッチラベル図録」加藤豊、板東寛司著
「猫マッチラベル図録」加藤豊、板東寛司著
昭和の時代、喫茶店や酒場をはじめ、多くの店が客にオリジナルマッチを無料で配布していた。マッチは広告媒体であり、現在のショップカードのような役割を果たしていた。凝ったデザインのマッチも多く、コレクターズアイテムでもあった。
1875(明治8)年に国産のマッチが製造されてから今年で150年。
本書は、これまでに製造された天文学的な数のマッチの中から、ネコをモチーフにしたラベルのマッチを集めたグラフィックブックだ。
当初、マッチは有料で、その売り上げはラベルに左右された。各社はさまざまなラベルを商標登録しており、猫柄の商標登録マッチは1887(明治20)年の登場から1960年までに77種が確認されているそうだ。
まずは、その猫柄ラベル商標登録第1号である「猫ノ歩行スル圖」から。
同じ構図ながら、ラベルによって背景や猫の柄、そして表情も微妙に異なり、当時の猫好きが企画したものと思われる。
ほかにも、招き猫やネズミの車夫が引く人力車に乗った猫、金魚鉢をのぞく猫、犬に追われる猫、鶏の卵を狙う猫など、さまざまな猫ラベルがある。
大正期になるとシルクハットをかぶった猫や傘を差した猫なども現れ、人々の生活の変化も感じられる。
昭和初期、マッチ仕立ての絵柄を木版で刷った収集家による趣味票が流行。その一部も収める。
さらに、銀座のカフェ「クロネコ」をはじめとする各地の黒猫をモチーフにした戦前以降のさまざまな店舗の広告マッチから海外のものまで。なんと2000点をジャンル別、歴史別に紹介。
デザインとともに、小さなラベルに書き込まれた店のうたい文句を読んでいるだけでも楽しい。
猫好きはもちろん、アート好き、レトロ好きの心をくすぐる一冊だ。 (風呂猫 2970円)