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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

血管を守ろう…脳卒中のリスクを上げる3つの病気をまずチェック

公開日: 更新日:

 みなさん、血管の健康を守る努力をしていますか?

 認知症対策で重要なのが、血管です。血管は体中に張り巡らされています。血管を血液が通り、それに乗って赤血球が酸素を体の隅々にまで運んでいきます。

 動物性脂肪や中性脂肪が多い食生活、肥満運動不足、過度の飲酒、ストレスの多い日々、睡眠不足、喫煙が重なると、年齢以上に血管が硬くなっていきます。正常な血管は流れる血液の量に応じて、伸びたり広がったりしますが、動脈硬化が進んだ血管はそのようにはいきません。よく例えられるのが、劣化したホースです。血液量によっては、ホースの途中に詰まりができたり、破れてしまったりが起こりやすくなります。

 動脈硬化には3つの種類があります。

 まずは粥状硬化。アテローム硬化とも呼びます。動脈は内側から内膜、中膜、外膜があり、内膜が傷つくと、そこからコレステロールが入り込み、プラークという構造ができ、血管が硬くなります。プラークが大きくなると、血管内はより狭くなります。血管も硬くなるので、血管は傷つきやすくなります。

 次に、中膜硬化。動脈の中膜にカルシウムがたまり、石灰化して血管が硬くなります。 

 そして、細動脈硬化。脳や腎臓の中には細い動脈が走っており、これらに動脈硬化が起こります。

 動脈硬化で引き起こされる病気のひとつが、脳卒中です。脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、一過性脳虚血発作の総称。脳卒中で脳の神経細胞が障害を受けると、認知症のリスクが高くなります。

 脳卒中から引き起こされる認知症を、脳血管性認知症と呼びます。

 脳の細胞は一度死ぬと、元には戻りません。脳血管性認知症で起きた記憶障害や認知機能障害を改善させる方法はないのです。しかし、脳血管性認知症は対策を講じることができる病気です。冒頭に戻るわけですが、血管の健康を守る努力をすることで、脳血管性認知症を起こしにくくできます。

 今すぐできることは、糖尿病、高血圧脂質異常症といった脳卒中の危険因子を持っていないかのチェックです。これらの病気はいずれも、血管の老化を進め、動脈硬化の進行にかかわります。

 過去に一度でも、血糖値、HbA1c、血圧、LDLコレステロール、中性脂肪の数値が正常範囲を超えていると指摘されたことがありませんか? もしあるなら、現在はどうかを調べるべきです。そして、糖尿病、高血圧、脂質異常症に該当するなら、速やかに対策を講じてください。将来の認知症対策につながります。

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