「炭火焼きで香ばしく減塩で体にもよい」インパクトありそうな言葉なのに意外に伝わりにくい理由
「捨てる勇気」が相手の心に確実に届く
「炭火焼きで香ばしく減塩で体にもよいハンバーグ」は、2つの価値が入っていて一見よさそうにも思えますが、実際は印象がぼやけてしまいます。味重視の人には「健康を気にして味は二の次なのでは?」と思われ、健康重視の人には「美味しさ優先で本当に体にいいの?」と不安がられるかもしれません。
どちらかを選ぶ。時には魅力的な要素をあきらめる。その「捨てる勇気」が、相手の心に確実に届くメッセージを生み出すのです。
これは、電池の仕組みに似ています。電池を直列につなぐと、力は一方向に強まります。並列につなぐと、力は分散してしまう。「伝え方」も同じです。
表紙に大型特集のタイトルをあしらうスタイルのビジネス雑誌の編集部にいた際、大型特集を2つ並列してデザインした号の売れ行きが、通常号と比べて明らかに振るわなかったことがありました。面白い特集が2つもあるのだから売れそうなものですが、実際は逆でした。これは表紙の力が分散したことを示しています。
ただし、これが当てはまらないこともあります。
それは、対立するような主語が並ぶ場合です。
「地頭がいい人とそうでもない人」
「説明がヘタな人とうまい人」
『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著 白根美保子訳 筑摩書房)
たとえば「地頭がいい人とそうでもない人の習慣」という対立は、読者に「自分はどちら側だろう?」という1つの疑問を生み出します。2つあるように見えて、実は関心を一点に集中させているのです。
これが「地頭がいい人の行動と習慣」だと、同じ内容でも関心が薄くなってしまいます。
2つの要素が並列に並ぶと力が分散し、対立軸として並ぶと1つの疑問に収束する。この違いが、伝わり方を大きく左右するのです。
▽武政秀明(たけまさ・ひであき)Webメディア編集長 1976年兵庫県神戸市生まれ。1998年関西大学総合情報学部卒。自動車セールスパーソン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年から東洋経済オンライン編集部。副編集長、編集長、編集部長を歴任。約12年間の在籍中に自身で7000本超のタイトルを考案してヒット記事を連発する一方、同期間にサイト全体で数万本に及んだ記事のアクセス傾向を徹底的に研究。読者の関心を大きく左右する記事タイトル=最初の言葉の作り方を独自に体系化する。東洋経済オンライン編集長時代の2020年5月には過去最高となる月間3億457万PVを記録。2023年5月にサンマーク出版へ転職後、SUNMARK WEBを立ち上げて編集長を務める。


















