永遠のテーマ!家族が描かれる文庫本特集

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「しあわせの輪 れんげ荘物語」群ようこ著

 家族は小説にとって永遠のテーマのひとつ。この世に存在するすべての人に家族がいて、血がつながっていようがいまいが、日々の喜びや悩みの多くは家族によってもたらされる。今週は、家族や結婚を題材にした小説を紹介する。



「しあわせの輪 れんげ荘物語」群ようこ著

 早期退職して、貯金を取り崩しながら暮らすキョウコは、義姉に誘われ正月を兄一家と過ごす。帰省中の甥や姪も加わり囲んだ正月の料理はどれもおいしかった。キョウコは兄夫婦が飼い始めたネコ一家と兄一家にはさまれて、とても幸せな気持ちになった。みんなが幸せそうにしているのを見ている自分が幸せで、それだけでいいと思う。

 数日後、キョウコは風邪をひいて寝込んでしまう。同じアパートに住むクマガイさんやチユキさんが咳を聞きつけ、代わる代わる、差し入れを持って訪ねてきてくれる。義姉に連絡すれば駆け付けてくれるだろうが、また同居を持ち掛けられるに違いない。だからひとり静かに養生するキョウコは、ベッドに横たわりながら、これから先、さらに年齢を重ね、体が弱くなってきたときのことをふと考えてしまう。

 古いアパートで気ままな1人暮らしを楽しむキョウコを主人公にしたベストセラー「れんげ荘物語」シリーズ第8弾。 (角川春樹事務所 616円)

「妻が余分」新津きよみ著

「妻が余分」新津きよみ著

 定年退職を半年後に控え、本社に異動した元は久しぶりに自宅に帰宅する。40代から海外赴任で各国を転々としてきた。いつも単身赴任で家のことは妻の実希子に任せっきりだった。盛大な出迎えを期待したわけではないが、顔を出すと言っていた長女は、子どもが発熱したとキャンセル。次女も部屋にこもりきりだ。おまけに書斎にしようと思っていた空き部屋には義母の貴子が寝ていた。元の知らないうちに実希子が同居を始めていたのだ。元が大切にしていた雑誌のコレクションも無断で捨てられていた。

 もやもやとした思いを抱えたまま元は、空き家となった前橋の実家の片づけに通う。亡き母は元の思い出の品を何でも大切にとっておいてくれた。その中のひとつを手にしたとき、元にかつてのある思いが蘇る。(表題作)

 ほかにも、娘家族との同居を機に、婿の父親と暮らすことになった女性など、シニア世代の人間模様を描き出す短編集。 (徳間書店 935円)

「まっとうな人生」絲山秋子著

「まっとうな人生」絲山秋子著

「あたし」が結婚して富山に来て12年が経った。夫のアキオとは、彼が九州の工場に出張に来ていたときに、アルバイト先の居酒屋で知り合った。娘の佳音は10歳になった。双極性障害の持病を抱え、いろいろあるけど、まあまあ幸せに生きている。過去のあたしには想像もできない状況だ。

 2019年春、観光客で賑わう「ひみ番屋街」を家族と歩いていたとき、「なごやん」とばったり再会する。彼も妻子と一緒だった。なごやんは、あたしが九州の精神科病院に入院中に知り合った患者仲間だ。なごやんも7、8年前から県内の高岡市で暮らしているという。

 以来、なごやん一家と家族づきあいが始まる。そんな穏やかな日々の中でも、ときどき、あたしは「孤独が欲しくなる」。

 翌年2月のある日、あたしの頭の中で警笛が鳴った。新型コロナウイルスだ。あたしは家族を守るために臨戦態勢に入る。

 なごやんとの九州縦断の逃亡劇を描いた「逃亡くそたわけ」の続編。 (河出書房新社 1100円)

「結婚させる家」桂望実著

「結婚させる家」桂望実著

 結婚情報サービス会社の相談員・桐生は、17年前にこの仕事を始めたときから、仕事上、結婚指輪をしているが、自身は独身だ。会社の会員資格は40歳以上限定で、会員は好感を持った相手と「交際」し、期間中は互いに相性を確かめる。複数の相手と同時に「交際」をしてもいいが、その後、1人の相手とパートナーになろうと決意をすると「真剣交際」に移り、退会するシステムだ。

 桐生は、真剣交際に進むか悩む会員の背中を押すため、豪邸を使ってプレ夫婦生活をする1週間の宿泊体験を企画。

 最初に応募してきたのは、互いに結婚経験がある50代の梨佳と泰彦だった。梨佳は婚活をすすめてくれた妹とその娘、泰彦は息子と母親を連れ、6人での同居生活が始まる。

 ほかにも、当初は子どもが欲しいので30代の女性を希望していた53歳の直樹と52歳の梢など、婚活中のシニア男女を通し、結婚とは何かを考えさせる結婚物語。 (光文社 880円)

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