(6)深夜のホットドッグ
何を話すわけでもない。近くのホテルの解体に1年かかるらしいとか、カウンターにおいてある夕刊の記事にからんだ世間話など、とりとめもなく話す。今回の万博で、神戸の名バーテンダーが、そのまた師匠が1970年万博のときにつくったカクテルを再度お披露目したことを毎日新聞のコラムが伝えていた。
79歳の超ベテランが、55年前に考案された師のカクテルをつくる……。
「いい話ですね。ハイボール、もう1杯。それからホットドッグを」
2度目の万博は終わったが、1杯のカクテルは55年の歳月を超えて、受け継がれた。サンボアのハイボールにも、受け継いできた味がある。
このカウンターに立ち、ピーナッツをつまみに2、3杯のハイボールをごく短時間に飲み干しては、サッと立ち去る諸先輩方を、私は何人も見てきた。酒に強く、スマートな人は、ダラダラ飲まない。酒飲みたるもの、かくあるべし。そう教わったのはもう25年も前になるが、私の酒は、今もってダラダラと長い。

















