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中川淳一郎編集者・PRプランナー

1973年生まれの編集者・PRプランナー。多数のウェブメディアの記事にかかわる。日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」担当。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『それってホントに「勝ち組」ですか?』など。

熊本地震でも相次ぐフェイク動画から勧善懲悪ドラマも SNS収益化モデルで問われる表現規制の可能性

公開日: 更新日:

「スカッと系」「ダーマン風」ショートドラマで差別を煽る

 これまでは、災害や芸能人、動物などをネタにしてフェイクニュースを仕立てて収益化するのが、その制作側にとっては基本パターンだったが、フェイクニュースは往々にして波紋を呼ぶせいか、最近は「スカッと系」や「Dhar Mann(ダーマン)風」と呼ばれる、教訓的なショートドラマ動画をAIが生成することで収益化する仕組みも出始めた。ダーマン風とは、Dhar Mannという映像クリエーターによるもので、基本線としては「人を見た目で差別すると実はその人が実力者だったりもするものだ」といったものである。

 筆者が実際に見た動画(ダーマンによるものではない)では、みすばらしい格好の日本人老夫婦が高級寿司店に入るシーンが注目で、大将は「ここはアンタみたいなのが来る場所じゃねぇ!」と高圧的な態度で老夫婦を追い出す。夫婦は寂しそうに店を出るが、その後立派な車でやってきた男が大将に「あなたは出ていけ」と切り出すのである。なんと、老夫婦はこのビルのオーナーだったという設定で、大将は大慌てとなり、自らの傲慢な態度を反省する、といった内容だった。

 現代の寓話のような話は、「教訓がある」「勧善懲悪でスカッとする」といった具合で、動画や写真がとにかくウケる。ゲームセンターでオラオラ系の男が、メガネ姿で弱そうな陰キャな男を挑発して殴りかかると、返り討ちに遭うといった設定も、やっぱりウケる。そうなると、次のようなストーリーも恐らくウケる。

〈俺がラーメン屋でバイトをしていた時、俺の腕に入った入れ墨を批判し、「この店の店員はなっておらん! 店員は入れ墨禁止にしろ!」と店でラーメンをぶちまけた男性がいた。店長は「申し訳ありません」と謝ったが、男性は激高し、暴れて店だけでなく他の客にも迷惑をかけた。

 この件以降、店長は俺に入れ墨を隠すよう言ったが、俺は「ウマいラーメンを出せば俺の入れ墨なんて気になりません」と店長と一緒に最高のラーメンを追求するようになると、いつしかこの店は評判店となった。暴れてから2年後、あの男性が店に再びやって来た。その姿に俺は警戒をしたが、男性は「あんた、頑張ったんだな。入れ墨を差別してゴメン」と言い、俺と同じ柄の入れ墨を見せ、ラーメンをうまそうに食べて帰って行った〉

 こんなフェイクストーリーをベースにした動画は今やSNSにたくさんある。「不良が席を譲った」「入れ墨をしている男性が必死に仕事を頑張っている」といった話はウケるだろう。さらに移民による狼藉や、移民に苦しめられる日本人の話などもウケそうである。

 こうしてみると、ネットの収益化が登場したことで、妙なフェイク動画と差別扇動や恐怖煽りをもたらすおかしなドラマがあふれ返ってしまった。ドラマだからフェイクであっても問題ないという見方もありそうだが、これだけフェイクがあふれ、差別的な内容が大量に出回ると、そろそろ表現規制の議論が始まっても不思議ないだろう。

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