著者のコラム一覧
中川淳一郎編集者・PRプランナー

1973年生まれの編集者・PRプランナー。多数のウェブメディアの記事にかかわる。日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」担当。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『それってホントに「勝ち組」ですか?』など。

熊本地震でも相次ぐフェイク動画から勧善懲悪ドラマも SNS収益化モデルで問われる表現規制の可能性

公開日: 更新日:

 XをはじめSNSには、フェイク画像やフェイク動画があふれている。数多くの被災者を生んだ熊本地震をめぐっても、「地震の予測が的中した」「イオンモール熊本の爆発は外国人が引火させた」といった根拠のない情報がSNSで拡散。その中には、閲覧回数が数百万回に上ったものもある。

 一方、全国的な猛暑を受けて、タンクトップ&短パン姿で体調を崩した人をストレッチャーにのせて運ぶ救命救急士の画像もXで話題になったが、これもウソ。現役の救命救急士が否定し、猛暑であってもノースリーブを着ることはなく、ファン付きの作業着を着るとのことだ。救急現場は、時として危険を伴うだけに、ノースリーブは危ない。よく考えれば当然だが、Xでも「ここまで来たか!」といった声が相次いだように、パッと見ではフェイク情報にダマされなかねないだろう。フェイクのパターンを考えてみよう。

 まず地震や豪雨などの災害では、発生からの時間経過によってフェイクの中身が変わってくる。発生直後は、原因や予知、ナショナリズムを煽るようなフェイクがあふれ、復興や支援の動きが進むにつれて支援物資や仮設住宅など生活再建に向けたニセ情報が流れ出す。ザックリいうと、そんな傾向で、AIの登場もあって、画像や動画が巧妙化していて、真偽の判別が難しいケースもある。

 なぜこれほどフェイクニュースを中心にガセネタがあふれ返るのか。構図は単純である。SNSの収益化プログラムがあるからだ。SNSで収益を獲得したい人からすれば、インプレッションが高く、多数のコメントを獲得し、滞在時間が長くなればそれでいい。物事の真偽などはどうでもいい。最近はAIでそれっぽい動画や写真をだれでも簡単に作ることができるようになっている。それだけに、多くの人の注目が集まる災害は、フェイク製作者にとっては“稼ぎ時”ともいえるから、SNSへのフェイク投稿を厭わないのである。

■「いい話」「ショッキングな映像」「感動的な動画」が定番ネタで芸能人や動物を盛り込む

 SNSに流れるフェイクは、災害に乗じたものだけではない。常にあって、そのパターンとして多いのは、「いい話」や「ショッキングな映像」「感動的な動画」など。これらのパターンを掘り下げてみよう。

「いい話」の代表格は、イラク戦争の後に多数登場した。あるフェイク動画では、ホームパーティーのシーンが映り、子供が飛んだり跳ねたりして楽しんでいるところに、迷彩服を着た父親が帰ってくる。子供は「Dad!」と父に駆け寄って抱き着き、嬉し泣きをするーー。お涙頂戴のストーリーはさもありなんだが、デタラメだった。

 芸能人も「いい話」のネタとしてよく登場する。ストーリーは金銭援助が定番で、たとえば志村けんが後輩芸人から娘の病気の話を聞いたところ、1000万円を入れたボストンバッグを手渡す。後に病気は嘘だと判明するも、志村は「病気じゃなかったのか。それはよかった」とウソを水に流すという話だが、もちろんフェイクである。

 同様の話は、お笑いコンビ・カンニングの竹山隆範にもあった。相方の中島忠幸は白血病のため35歳で亡くなった。その後登場したストーリーは、竹山が中島の妻のためにギャラの半分を振り込んでいるという説だが、そんな美談はなく、本人が否定している。相方の療養中にその治療費等を払っていたという事実はあるようだが、死後はそのようなことはしていないという。竹山曰く「脱税になる」とのこと。

「ショッキング映像」では、動物がよく使われる。たとえば海外の動画では、クマが庭の敷地内に入ってきたという緊迫シーンがあった。そのままいくと、庭の中の人々皆が殺されるのではないか? 視聴者はそんな不安を感じるかもしれないが、勇気ある男性が塀のドアを開け、クマに出ていくよう促すと、おとなしく外に出ていく──。これはAIが生成した動画である。

 日本各地でクマの出没が相次ぐせいか、クマ動画はほかにもある。男性が家のドアの前のバルコニーで昼寝をしていると、クマがやってきて柵に両腕をかけて男性をにらみつける。男性が何かの拍子に突然目を覚まして動くと、クマは仰天して倒れ、慌てて逃げていく。見事にクマを撃退した男性だが、家の中から出てきたネコに仰天して柵の外に飛び出すという落ちがつく。話としては面白いが、ウソだった。

 さらに、危険を察すると体中からトゲを逆立てることで知られるヤマアラシもフェイク動画の“役者”になった。そのトゲを人間の方に無数に飛ばして攻撃するという内容だったが、ガセだった。

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