多様性に富んだまちづくりと規制(下)歴史的に喫煙所は社交の場で洒脱な会話が生まれていた
──まちづくりをしていくうえで、都市空間の中から喫煙が排除されていく現象についてどうお考えでしょうか。
小林 喫煙に対しては日本だけでなく世界的に制限しようという動きになっています。健康問題ですからこれからも規制は続くでしょう。ただし、喫煙という習慣は急に変えることはできないし、やめることでイライラしたり仕事に集中できなかったり悪影響が出ることもあります。喫煙所の撤廃、削減をやり過ぎることも問題だと思います。
──喫煙に関しては健康問題を理由に一方的に規制されています。
小林 喫煙は文化と密接に絡んでいました。宗教的な儀式で喫煙するということが古代マヤ文明ではありましたし、喫煙する場所が特別な空間として捉えられていることはよくあります。例えばアラブでは住宅の最上階、いちばん眺めのいいところに喫煙する場がサロンとして設けられていたりして、社交場と喫煙は密接に絡んでいるのです。喫煙が宗教儀式や社交の中でどう用いられてきて文化の形成にどう寄与したのかを理解する必要があります。文化や伝統というのは一度途切れさせると復活させることはなかなか難しい。断絶させる前に、その価値を把握しておくことが重要なポイントですね。