ウェルビーイングな生き方を探る(上)役割意識と刹那的な価値判断に翻弄される日本人

公開日: 更新日:

香山 多くの日本人にとって、いったん与えられた役割を失うというのは死に等しいことで、なんとしてでも役割を守らなければという思いの中で生きてきたわけです。

 ──その一方で、変化も表れてきています。

香山 ここ40年ほどですかね、女性解放とか、弱者の権利を守ろうとか、個人の意識とか、ようやく言われるようになった。長い長い歴史の中では、まだまだ最近のことです。でも、個人主義はまったくと言っていいほど浸透していません。結局は、常に組織の中で役割を失わないように忖度して、自分の立ち位置を評価しながら渡り歩く社会になっていますね。

■リアル社会に加えてSNSでも横行する同質性依存

 ──阻害要因は?

香山 日本が全体として経済的にも国際社会においても停滞し、少子化をはじめとする重い社会問題が浮上してきて、個人の自由を大切にという考え方を止めようとする動きが出てきたのです。その象徴が保守回帰です。個人としてではなく、勝ち馬に乗るしかないという風潮になってきて、優勢な側にみんなが一斉に乗り、そこでの自分の優勢さを保つために、自分と違う側の人たちを激しく罵倒したりすることで、自己確認しつつ、周囲に自分をアピールすることで、自分を守っている。個人が自分の意見を持って当然という余裕、懐の深さが日本の社会になくなってしまったように思えます。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった