カゴメはトマトから“野菜の会社”へ…植物性由来「プラントベース」食品の開発を加速
「トマトの会社から野菜の会社へ変身」
コロナ禍に突入した2020年、カゴメの社長に就いた山口聡氏は、コロナをくぐり抜けるなかで野菜へのシフトをスローガンに掲げた。
カゴメはトマト関連商品で有名だ。創業者・蟹江一太郎が1899年に開始したトマト栽培事業を母体に、トマトソースやトマトケチャップの製造販売で大きく発展してきた。
トマト製品と並んでヒットを続けているのが「野菜飲料」と、3年をかけて開発した「野菜生活100スムージー」だ。
トマトのイメージが強かったカゴメは、野菜をふんだんに使った商品や、ホウレンソウ、小松菜のベビーリーフなどの生鮮野菜も販売。卵や肉を一切使わず、全て植物性由来の「プラントベース」食品の開発を加速する。
22年12月期(通期)連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる売上収益は前期比8.4%増の2056億円、営業利益は8.9%減の127億円、当期利益は6.6%減の91億円だった。
家庭用のトマトケチャップなど調味料は22年4月1日納品分から3~9%値上げした。原材料のトマトペーストなどの価格が上昇しており、「自助努力だけではコストアップを吸収するのは困難」というのが理由だった。
値上げしたにもかかわらず、売上収益に占める売上原価の割合は65.4%。前期より2.1ポイント悪化した。
23年12月期の連結売上収益は前期比3.6%増の2130億円と増収だが、営業利益は42%減の74億円、当期利益は55%減の41億円と大幅な減益を余儀なくされそうだ。トマトペーストやニンジンの原材料や段ボールなどの資材の価格高騰が134億円の減益要因となる。
2月1日出荷分からトマトジュースなどの飲料は6.7~12.5%、トマトケチャップなどの食品は10.1~19.6%価格を引き上げた。トマトケチャップは22年4月以来、10カ月ぶりの再値上げだ。
それでも2月からの製品価格の引き上げではコスト増を補いきれない。
値上げの影響は多方面に及ぶ。健康志向を追い風に急伸してきた野菜飲料市場が縮小した。海外は米国が価格改定や外食需要の回復により増収。価格改定を上回る原料価格UPに加え、販促費を積極的に増やしたことにより減益となった。
天候不順によるトマトの生産減や原材料コスト高が継続するとみており、増収減益基調は変わらない。
25年12月期を最終年度とする新中計で、年率2%の成長を目指す。他社との提携やドローンを駆使した新しい領域に300億~500億円を投資する。