自民裏金事件を政治資金研究の第一人者が斬る「改革には透明性と外部監査が必須です」

公開日: 更新日:

岩井奉信(政治学者)

 昨年末に自民党派閥のパーティー収入の裏金化が発覚してから、4カ月が経過した。複数の国会議員と会計責任者が立件され、今なお政界を揺るがしている。安倍派や二階派の衆院議員が政治倫理審査会で弁明したが、実態解明からは程遠い。裏金議員を根絶するにはどんな規制が必要なのか。政治資金研究の第一人者に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──億単位の裏金が発覚した今回の事件をどうご覧になっていますか。

 私が知る限りで過去最悪の事件です。1988年に発覚したリクルート事件と比較されることが多いですが、あの当時は法制度に不備があった。ところが、今回の場合はそもそも違法行為ですからね。大勢の議員が長年にわたって組織的に不法行為を行っていたわけですから、ちょっと考えられないです。最近の「政治とカネ」は個人の問題として捉えられ、議員が辞任して終わりとなるケースが多い。しかし、今回は個人のモラルの問題ではありません。

 ──特に安倍派は裏金額が大きかった。

「自民1強」「安倍1強」時代が長く続いたことで、捜査機関はどうせ手が出せない、と安倍派の議員たちは甘く見ていたのかもしれません。不正が平気でまかり通ると思っていたのではないか。

 ──1強の弊害ですね。

 問題が明るみに出る前から、不自然さは感じていました。安倍派の政治資金収支報告書を見ると、パーティーの規模に比べて収入が異様に少ない。参加者数が麻生派のパーティーの倍なのに収入が半分程度で、明らかにおかしい。これは自民党内でも噂になっていました。検察も2年ほど前から目をつけていたといわれている。2022年の安倍派パーティーの直前に、安倍元首相が「不透明なことはやめよう」と指示したのも、党内の噂や検察の動きを察知したからではないかとみています。

 ──リクルート事件後、自民党は政治資金の透明化などを含む「政治改革大綱」をまとめたのに、また「政治とカネ」の問題が起きてしまった。

 私も民間政治臨調の一員として、政治改革に関わりましたが、不十分な点はあったかもしれません。例えば、政治資金をチェックする第三者委員会をつくるよう求めましたが、受け入れられなかった。現金授受の禁止については、一顧だにされませんでした。ただ、企業団体献金の規制強化、政治資金の公開基準の厳格化などは達成できた。大綱が掲げる理念を順守すれば、今回のような問題は起きなかったはずですが……。

■現行制度は“抜け道”“トンネル”だらけ

 ──改革の理念が議員らに守られなかったと。

 政治改革で政治資金規正法が改正された後、“抜け道”をあちらこちらにつくられてしまったわけです。例えば、企業団体献金は「政党」だけに集約するとしたのですが、後々に議員本人が代表を務める「政党支部」にも道が開かれました。また、政治家の資金面における公私峻別の徹底が求められ、政治家個人への寄付が禁じられたにもかかわらず、政党から政治家個人にカネを渡してもOKということにされてしまった。これが、政党から党幹部に渡され、使途の公開義務がない「政策活動費」の背景にあります。“抜け道”どころか“トンネル”です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    石破首相「トランプ関税」日米交渉へ怪しすぎる本気度…外務省の具申に「アベ案件だろ」と吐き捨て

  2. 2

    公明が自民に提案…物価高対策に「マイナポイント」活用案で国民の怒りに“火に油”

  3. 3

    関税交渉で日本が持参した危険な「お土産」か…米国債追加購入の無間地獄シナリオ

  4. 4

    大阪万博会場の“爆発”リスクはやっぱりヤバい…高濃度メタンガス問題に国や府は安全強調も、識者が疑問符

  5. 5

    立憲で急浮上の経済政策「馬淵案」に“一石三鳥”の可能性 トランプ関税めぐる交渉では日本の武器にも

  1. 6

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  2. 7

    石破政権vsトランプ関税は早くも「負け戦」確定か…交渉前から“お人よし”でカードを1枚失う

  3. 8

    旧統一教会は本当に解散させられるのか…米政権が「待った」をかける?

  4. 9

    「いきなり!ステーキ」倒産危機から一転…黒字転換&株主優待復活でも“不透明感”漂うナゼ

  5. 10

    農相が備蓄米の追加放出表明も「中小の米屋には回って来ない」…廃業ラッシュで地域の安定供給が滞る恐れ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  2. 2

    清原果耶ついにスランプ脱出なるか? 坂口健太郎と“TBS火10”で再タッグ、「おかえりモネ」以来の共演に期待

  3. 3

    だから桑田真澄さんは伝説的な存在だった。PL学園の野球部員は授業中に寝るはずなのに…

  4. 4

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  5. 5

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  1. 6

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 7

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 8

    ドジャース大谷 今季中の投手復帰は「幻」の気配…ブルペン調整が遅々として進まない本当の理由

  4. 9

    打撃絶不調・坂本勇人を「魚雷バット」が救う? 恩師の巨人元打撃コーチが重症度、治療法を指摘

  5. 10

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した