長嶋茂雄さんは常に前向きなことしか言わない。「メークドラマ」はその“暗示”から始まった
2010年公開「仁志敏久の真実」の第3回より
“燃える男”、“ミスター”の愛称で国民的人気を誇ったプロ野球元巨人監督の長嶋茂雄さんが6月3日、都内の病院で肺炎のために亡くなった。享年89。選手、監督として数々の伝説、逸話を残した「ミスタープロ野球」は、身近に接した誰もにそれぞれの「長嶋茂雄像」を強く印象づけてもいる。日刊ゲンダイの連載で多くの球界OBが語ってきたその実像を再構成して緊急公開します。
今回は、2010年に公開された長嶋巨人の不動の1番打者・仁志敏久氏のインタビューを通して構成された「仁志敏久の真実」の第3回を掲載(本文中の年齢・肩書きなどは当時のまま)。
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「長嶋監督は常に前向きなことしか言わない。それで、選手が暗示にかけられる。あのときもそうでした」
仁志が巨人に入団した1年目の96年。巨人は最大11.5ゲーム差も離された広島を逆転し、リーグ優勝を果たす。俗に言う、「メークドラマ」である。
監督の長嶋自身が作ったこの造語を旗印にし、7月から怒涛の猛追を見せる。7月9日の札幌市円山球場で行われた広島戦の二回2死無走者から9者連続安打を放って一挙7得点。快進撃はここから始まった。