ネスプレッソもジレットも本体販売で儲けていない…「長く使ってもらえる」商売が圧倒的に強い理由

公開日: 更新日:

 世の中のさまざまな仕事はたいてい「しにくい」を「しやすい」に変えることで相手に喜んでもらい、その対価としてお金をもらっているものだ。一度買ったらずっと使い続ける「替え刃モデル」の例で考えてみよう。

 コクヨのワークライフスタイルコンサルタント・下地寛也さんの著書で、生活の中におけるさまざまな「しにくい」を、「分ける技術」を使って「しやすい」に変えることを探った『「しやすい」の作りかた』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

  ◇  ◇  ◇

 優れたビジネスモデルの一例として、「替え刃モデル」というものがある。これは「ジレット」という安全カミソリのメーカーが確立した「まずは本体を安く売り、その後の消耗品やサービスを長期間にわたって提供することで稼ぐ」というモデルだ。

 三谷宏治著『ビジネスモデル全史』にそのエピソードが紹介されているので、かいつまんで概要をお伝えしよう。

◼️いかにスイッチングコストを上げるか

 発明一家の子供として育ったキング・C・ジレットが王冠メーカー(クラウン・コルク&シール)で営業担当として働いていたときに、社長のウィリアム・ペインターから「君も、一度使ったら捨てられるものを発明しろ。そうすれば客が安定するぞ」とアドバイスを受ける。ジレットは四六時中そのことを考え続け、出張先のホテルでカミソリを研いでいるときに「なんでこんな厚い刃にして、いつも研いでなきゃいけないんだ。刃を薄い鋼鉄にして安くすれば、使い捨てにできる!」と気がついたのだ。

 そこから技術開発に6年かかり、1903年に特許を取得。本体と替え刃を分けて、「替え刃で稼ぐ」というビジネスモデルにしたわけだ。

 日本でも岡田良男氏が、ナイフやカミソリの代わりに、刃が交換できて、しかも刃を少しずつ折って使うという『折る刃式カッターナイフ』を作っている。残念ながらこれは「コクヨ」ではなく、「オルファ」(社名が〝刃を折る〟ことに由来)というメーカーの商品で、安全カミソリ、カッターともに持ち手と刃を分けて商品にするという発想が面白い。

 最初にかかる費用を「イニシャルコスト」、それを維持していくための費用を「ランニングコスト」という。

 インクジェットプリンター(イニシャル)とインク(ランニング)の関係を思い浮かべるとイメージしやすいだろう。家電量販店に行くと、1万円以下でプリンターを売っていて「なんて安いんだ」と思うが、インクは結構高い。携帯電話と通話料、『ネスプレッソ』のマシンとコーヒーなども同じしくみだ。イニシャルコストが安いとやっぱり買いやすい。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する