概算金が前年比で3~7割高の見通しなのに…収入増のコメ生産者が喜べない事情
2025年産米をめぐり、小泉農相は先週、「概算金」が前年比で3~7割ほど高くなるとの見通しを示した。概算金は、JAが農家から委託を受けたコメを集荷する際に支払う一時金のこと。秋の出荷前に概算金が前払いされることで、農家の資金繰りなどをサポートする仕組みになっている。
店頭価格の指標となる概算金の大幅な値上がりで、新米価格は昨年よりも上がっている状況だ。「令和のコメ騒動」が顕在化する前の23年までは人件費や生産資材の高騰で、農家が再生産を続けられなくなるほど価格は低迷していた。ところが、概算金の大幅上昇で収入増が見込めるにもかかわらず、生産者側からも「今年は高過ぎる」という声が上がり始めているのだ。なぜなのか。
■主王権を奪われるJA
「店頭価格が5キロ4000円を超えると、消費者の購買意欲が途端に減退していきます。高止まりが続いて消費が細れば、当然、コメが余って価格が下がります。コメ価格が低迷していた期間が長かっただけに、今のうちに稼いでおきたいという農家は少なくありません。しかし、大規模な農家ほど価格や需給の急変動は設備投資の兼ね合いや先が読めなくなることから望んでいないのです」(米流通評論家の常本泰志氏)