日報問題の火付け役 布施祐仁氏が“PKO隠蔽工作”を斬る
〈当時の業務日誌を情報公開請求したら、すでに廃棄したから不存在だって…。まだ半年も経っていないのに。これ、公文書の扱い方あんまりだよ。検証できないじゃん〉。防衛省を揺るがしている南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派遣された陸上自衛隊の日報問題は、昨年12月に書き込まれたこのツイッターから始まった。火を付けたのは気鋭のジャーナリスト・布施祐仁氏。メディアや国会で追及され、安倍政権は唐突に5月末のPKO撤収を発表。組織的隠蔽の疑いが濃厚になった防衛省は特別防衛監察を実施する事態になった。恐ろしいほどの政権のデタラメ、ドタバタを今どう見ているのか。
■稲田防衛相も捜査対象にすべき
――日報問題が急展開しています。不開示決定後の再調査指示を受け、陸自司令部は上部組織の統合幕僚監部に日報の存在を報告。防衛省上層部までその情報は届いたにもかかわらず、「今さら言えない」という理由で廃棄の指示がなされたと報じられました。
当初は陸自しか探索しなかったので、統幕で保存していた日報を見つけられなかったと説明していましたが、実際には陸自にもあった。ツジツマが合わなくなるから廃棄したとなれば、隠蔽に隠蔽の塗り重ねです。大臣の指示に背いて防衛省が組織ぐるみで隠蔽工作をしたとなれば、文民統制上きわめて大きな問題でもあります。
――稲田防衛相は一連の経緯を把握していなかったのでしょうか。
それが一番のポイントです。特別防衛監察は大臣直属の防衛監察本部が行う組織内調査にすぎません。ここまで大スキャンダルに発展した以上、稲田防衛相も調査対象にしなければおかしいでしょう。国会での集中審議や証人喚問で関係者を質す必要があると思います。
――なぜそこまで日報の存在を隠そうとしたのでしょう?
2015年9月に安保関連法の成立を強行した安倍政権は、南スーダンPKO部隊に新任務の駆けつけ警護を付与するタイミングを探っていました。私が日報の開示請求をしたのが昨年9月末。通常は30日以内に開示あるいは不開示が通知されます。ところが、1カ月後に届いたのは〈開示決定期限延長〉の知らせ。それから2週間後に政府は駆けつけ警護付与を閣議決定し、3週間後には先発隊が出国しました。期限延長は駆けつけ警護をめぐる批判や議論を避ける時間稼ぎだったのではないか。延長も不開示決定も、新任務の実績作りが優先されたからだとしか思えません。
――今月10日に安倍首相は「南スーダンでの活動が今年1月に5年を迎え、一定の区切りをつけられる」と5月末をメドにPKOを撤収すると発表。ちょうど森友学園の籠池理事長が会見中という絶妙のタイミングでした。
部隊が派遣されている首都ジュバでは、昨年7月に大統領派と副大統領派(当時)による大規模戦闘が発生しました。にもかかわらず、政府は「法的な意味における戦闘行為ではなく衝突」とし、「ジュバは安定している」というスタンスを取り続けてきた。現地は撤収が当然の情勢ですが、このタイミングでの判断は正直予測していませんでした。
――「安定している」というのはウソだった。
現実はむしろ逆で、この半年間で南スーダンの治安は不安定になっています。部隊が活動するジュバから南方エリアの情勢が急激に悪化し、いつジュバに波及するか分からない。新任務の実績はできたので、コトが起きる前に撤収させようということだとみています。