SE残酷物語…裁量労働&高プロより先にすべきは制度改正
データ捏造発覚で、裁量労働制拡大が削られた安倍政権の「働き方改革」だが、拡大阻止で済ませてはいけない。現在、専門型裁量労働制が適用されているSE(システムエンジニア)では“定額働かせ放題”が横行し、実情に合わなくなっている。既存制度自体が破綻しているのである。
ハローワークの求人情報のネットサービスで、東京の「一般・フルタイム」の「裁量労働制」を検索すると、29件ヒットするが、そのうち21件がSEだ。
「激しいコスト競争をしているシステム会社にとって、SEが定額の給料でソフトを開発してくれる裁量労働制は重宝されています。SEに時間給で払っていたら、大幅な人件費アップですよ」(IT業界関係者)
1988年に裁量労働制が導入された際、記者、デザイナー、プロデューサーとともに、「情報処理システムの分析、設計」つまり、SE職も指定された。労働問題に詳しい塩見卓也弁護士が言う。
「80年代のSEは技術者も少なく、専門性の高い仕事だったと言ってもよいでしょう。内容も進め方も、システム開発を受けた技術者に委ねられていたようです。ところが、現在のシステム開発は分業化され、下請けが受けるケースが多い。開発全体の統括者は裁量はあるでしょうが、個々のSEは与えられた仕事を納期通りにこなしていくわけです。命じられた仕事の締め切りが2、3日後なんて事例がざらにあり、そんな状況では裁量などありませんよ」