「核開発の父」カーン博士の告白には日本も敏感に反応
プルトニウム製造係長 竹村達也さん
1972(昭和47)年、茨城県東海村の動燃(現・日本原子力研究開発機構)で働く科学者・竹村達也が失踪した。大阪大学工学部を卒業し、米アルゴンヌ国立研究所にも留学、帰国後はプルトニウム製造係長も務めていたエリートだ。その後、竹村の名前は警察庁の拉致関連リストに登場する。
プルトニウム技術者だった竹村達也の失踪に対して、警察や動燃の後身である日本原子力研究開発機構の動きは鈍い。しかし、2004年にある科学者と北朝鮮の関わりが発覚した時は、日本政府に緊張感が走った。
その男の名は、アブドル・カディール・カーン。パキスタンでは「核開発の父」と言われ国民的な英雄だったが、北朝鮮、リビア、イランに核兵器に使える技術や機器を流したことを04年の2月に告白した。
「核の闇市場」が存在する――。世界中に戦慄が走った。
国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、カーン博士がパキスタンの国営テレビで告白した翌日、「カーン博士は氷山の一角だ。核の闇市場は巧妙に活動している」と語った。