エース科学者の失踪知らなかった警察署長「引き継ぎない」
動燃の後身である日本原子力研究開発機構(JAEA)は、竹村達也の失踪について何も知らなかった。では、茨城県警はどうだろう? 竹村が失踪した時、動燃の東海事業所にやって来て「北に持っていかれたな」というセリフを残したのは、勝田署の刑事だ。さらに勝田署は「核物質を過激派から守る」ことを目的に、動燃の総務部門と協力していた。
私はワセダクロニクルのメンバーと、竹村の件を知っていそうな茨城県警の関係者を捜した。ワセクロメンバーのひとりが、ある茨城県警OBを見つけだした。
そのOBは、勝田署の後身であるひたちなか西署(現・ひたちなか署)の署長や、スパイ事件を扱う県警本部外事課の課長を務めている。ひたちなか西署長を務めていたのは、警察庁がホームページに「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」に竹村の情報をアップした2013年だ。
メンバーが自宅を訪れた。インターホン越しに取材の趣旨を伝えると、スエット姿のまま玄関先で取材に応じた。
――警察庁のホームページに竹村の情報が掲載された時に、家族の了解を得る手続きはしなかったか。