敵基地攻撃能力を考える(1)狂気に満ちたロシアの主張と行動は国民の国防意識を高めた
今年の2月24日、ロシア軍が国境を越えてウクライナに侵攻を始めた。文字通りの「侵略戦争」の開始である。
今回は、事前にアメリカが監視して正確に警告を発していたので、ウクライナが準備をできたために戦線が膠着して、リアルタイムで報道される結果、戦場の現実が世界に拡散されている。
それにしても、ロシアの主張と行動は狂気に満ちている。
ロシアとウクライナが同じ民族(兄弟民族)だという不正確な前提の下に、「8年間ウクライナ政府によりジェノサイド(集団殺戮)にさらされてきた人々を保護するために、ウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指していく」として、「ロシアとウクライナの関係を誰にも干渉されず自分たちでつくり上げ、内側から強くなれるように」今回の軍事行動を行ったと強弁している。
それでいて、ロシアがウクライナで現実に行っていることは、ウクライナの主権(内政・外交の独立性)の侵害とジェノサイドそのものである。これらは、民族間の平等と民族の自決を定めた国連憲章に違反しており、戦時における文民の保護に関するジュネーブ第4条約に違反する非人道的行為である。
このようなロシアが現実に北方4島を軍事占領しており、ロシアの友好国である中国が尖閣諸島の実効支配を目指している。わが国の主権者国民が「国防意識」に目覚めたのは自然なことである。
確かに、憲法9条の下で「専守防衛」に徹してきたわが国がロシアのような侵略国にならないで済んだことは明らかである。しかし、ウクライナの現実に直面して、日本がウクライナのような被侵略国にならないためには、これまでの「消極的」な専守防衛政策で十分なのか? という当然な疑問が世論の中に芽生えてきた。それに呼応したのが、自民党安保調査会の「敵基地攻撃能力」「反撃能力」の議論である。
確かに、攻める側の立場で考えてみれば、相手国の側に「反撃能力」がないことが明らかならば、ためらわずに侵攻できる。だから、独立主権国家である以上、仮想敵国に対する反撃能力を持っていて当然ではある。(つづく)
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