現実的で冷静な防衛論議を行うべき 「維新嫌い」の反発に驚かされた
本欄前稿(5月13日付)で、維新の防衛政策が、左右の両極端の中間にあって、世論の中間派(多数派)の「不安」を的確に捉えていると指摘し、改めて、民意を無視しない率直な防衛論議が急務だと提言した。
それに対して、多くの知人から予想外の反発が返ってきて驚かされた。いわく、「維新を喜ばせるだけだ」「そう言われても維新には投票しない」「維新は嫌いだ」等。
改めて前稿を読み返してみたが、私は「維新に投票しろ」とは言っていない。
ロシアのウクライナ侵略に驚いた世論の多数派は、専守防衛で立派に抵抗して独立を維持しているウクライナの現実を見て、「今こそ、軍事力ではなく、憲法9条を持つ国として平和外交を!」と声だけをあげているいわゆる左翼にも、これを奇貨として、「今こそ9条を改正して普通の軍事大国に」と叫んでいるいわゆる右翼にも、違和感を覚えているように見える。
だから、専守防衛の原則(憲法9条)は守るが、そのうえで、専守防衛の能力(軍事力+外交力の総合力)を向上すべきであるとする維新の政策提言が多くの支持を得たのだと私は思う。
軍国主義が生産的でないことは、ロシアの失敗で明らかである。同時に、専守防衛の意思と能力がなければ、今、ウクライナは地球上に存在していないはずである。この現実を前にして、私たちは、今、改めて現実的で冷静な防衛論議を行うべきである。
維新はしばしば「ポピュリズム(大衆迎合主義)政党」だと揶揄される。しかし、民主主義国家において、政党はまず何よりも「民意の鏡」であるはずだ。そのうえで、主権者国民を教化するオピニオンリーダーでもある。
その点で、今、日本という国の歴史と能力を無視して「今こそ経済力に見合った普通の軍事大国になるべきだ」と説教している政党も、「9条を持つ国として、軍事ではなく、平和外交で」と叫んでいる政党も、いずれも現実離れしている。
今、私たちが行うべきは、抽象的な憲法論議ではなく、専守防衛能力を急いで高めるための具体的な議論ではないか。
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