<第9回>血の滴るステーキを見た瞬間、ナイフとフォークを置いた

公開日: 更新日:

 目の前に置かれた分厚い肉の塊が、いまも鉄皿の上でジュージューと音を立てている。網状の焦げ目と、ガーリックのにおいは強烈に胃袋を刺激した。

「このステーキは絶対にうまい」

 モンゴル人力士はフォークとナイフを手に取りながら、ゴクリと喉を鳴らした。

 来日して数カ月後、先輩の幕内力士の厚意でタニマチと共に都内のステーキハウスに連れていかれた。食通の間で評判の店。日本で頑張っているだけに、せめてうまい肉を食わせてやろうという先輩からの心遣いだった。しかし、肉を切った瞬間、食欲も期待も、一気にしぼんでしまった。モンゴル人力士は、黙ってナイフとフォークを置いた。先輩力士はけげんな表情で肉を見る。肉汁と共に赤い血が滴る、見事なレア。この店で最も人気のある焼き方だ。「おい、どうしたんだ」と聞く先輩に、モンゴル人力士はこう答えた。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    近藤春菜の地上波激減に友近真っ青…大きすぎた反旗の代償

  2. 2

    巨人投壊の犯人は誰?桑田補佐「投げ込み奨励」が目の敵に

  3. 3

    大阪の“二の舞”か5.4万人入院できず…迫る最悪の医療崩壊

  4. 4

    大谷二刀流が意外な不人気の謎解き 報道とファンは対照的

  5. 5

    オリラジ藤森慎吾 “司会1時間1000万円”オファー断った嗅覚

  6. 6

    夏目三久“女子の本懐”と玉の輿 フリーアナ戦線から一抜け

  7. 7

    「リコカツ」永山瑛太の新機軸 守られたい女子急増の予感

  8. 8

    小池都知事が大誤算…「東京五輪中止」ブチ上げの効果消失

  9. 9

    ポスト夏目三久は誰?引退で熾烈な“椅子取りゲーム”が勃発

  10. 10

    菅野の故障で巨人が“腕まくり”引き留めに破格の40億円用意

もっと見る