“ウマミの維持”が生んだFIFA汚職 MLB薬物禍に酷似の指摘

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 状況が一変したのは2004年1月のことである。当時のジョージ・ブッシュ大統領が一般教書演説を行った際にメジャーリーグにおける薬物使用の問題を批判したことで、「メジャーリーグの薬物使用」はもはや球界の内部で処理できる問題ではなくなり、社会問題化したのである。

 こうした外部からの圧力は「メジャーリーグは薬物に甘い」という批判を引き起こし、「球界の最高峰」というブランドの価値は失墜するかに見えた。その結果、放映権収入や観客の減少といった興行面での不利益の発生を危惧した機構や球団経営者は従来の態度を翻し、薬物の規制を積極的に進めたのだった。

 今回のブラッター氏も2004年当時のメジャーリーグも、いわば「ブランド価値の維持」という大義名分と、その背後にある「ブランド価値がもたらすウマミの維持」という現実的な問題の前に態度の変更を余儀なくされたという点で、極めて類似する構造を持っている。そして、収益の減少の危険性に直面するまで「悪事を悪いと認めない」という姿も、著しく似ているのである。

(アメリカ野球愛好会副代表、法大講師・鈴村裕輔)

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