オリックス宮城2年目の飛躍 父親が明かした心技体のルーツ

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奥川、佐々木世代のドラフト1位

 高卒2年目左腕・オリックス宮城大弥(19)が本格化の兆しを見せている。奥川恭伸ヤクルト)、佐々木朗希ロッテ)を擁し、「黄金世代」と言われる2019年ドラフトの高卒組の中で、ここまで4勝0敗。防御率2.05はリーグ2位と同世代で突出した成績を残している。

 身長171センチと小柄ながら、最速153キロを誇るキレのある速球を内外角に投げ分ける制球力はもちろん、プロ入り後に習得した90キロ台と100~110キロ台の2種類のカーブで緩急をつけるなど、投球技術も向上。時折、内角へズバッと投げ込むマウンド度胸もある。

 18日のロッテ戦は5回4失点だったが、このままいけば、本人がかねて目標にしている新人王獲得も間違いないだろう。飛躍の2年目を迎える19歳の心技体の源流を探るべく、父・享さんに話を聞いた。

 4歳から野球を始めた宮城について、享さんは「小学校入学前からお世話になった志真志ドラゴンズ(宜野湾)の当時の富岡監督にきちんと指導してもらったことが大きいと思います」と言う。

「4、5歳の時にはもう、投打の基本を教わっていました。投球についてはコントロールを身に付けるため、ベース板の左右に10人ほどの子供たちを立たせて、ボールを当てないように投げさせた。打撃は内角、外角、真ん中の打ち方について、ホームベース上にそれぞれ球を置きながら、指導されていました」

 宮城は志真志ドラゴンズ時代、捕手以外のすべてのポジションを経験した。左利きだったが、内野守備は右投げでやった。「左右どちらも投げられる方が先々にプラスになる」という監督の考えがあったからだ。

■右投げで遠投「100メートル」

 こうして身体能力に磨きがかかるだけでなく、左右の体のバランス感覚が養われた。一時は右投げで遠投100メートルほど投げられるまでになったというから驚きだ。守備では、軟式とはいえ、硬式でも対応できるグラブの出し方を教わった。

 中学進学後は、宜野湾ポニーズで投手を中心に、外野、一塁をやった。小学生時代に実戦的な練習を積んだ宮城は、中学2年で沖縄県選抜、中学3年でU15日本代表に選出され、数多くの国際大会に出場。興南高進学後も、1、2年時に夏の甲子園出場、3年時にU18日本代表に選ばれた。

「大舞台で場数を踏んだことで、マウンド度胸だったり、精神的な強さを身に付けることができたのかもしれません。本人はあまり先を見過ぎず、現実を見て、1球、1イニングを丁寧に、踏み固めていくような性格です。高校時代は早い時期から大学や社会人からお誘いを受けましたが、先のことは分からないと、すべて断っていました」(享さん)

「家族に負担をかけられない」

 そんな宮城は高校2年のころ、プロ入りの決意を父に明かした。

「以前から、プロ入り一本という意識はありましたが、改めて、『進路はどうする? プロから指名がかからなかったらどうする?』と尋ねると、『大学へは行かない。家族にはもう、負担はかけられない。実業団(社会人)でどこか取ってくれるところがあれば、どこへでも行く』と。野球で飯を食っていくという本人の強い意志を改めて感じました。そこから、投手としてさらにもう一段、成長したように感じます」(享さん)

 宮城が家族に負担をかけられない、と言ったのは、家計の問題もあった。

 宮城が小学3年から高校で寮に入るまで、父、母、妹と家族4人、6畳一間で暮らしていた。

「私が事業に失敗したことで、家族には本当に苦労をかけました」と、享さんが続ける。

「電気や水道、ガスが止まることもあったし、1週間の毎日3食が、シーフードならぬ具のない『ノーフードカレー』だったこともありました。小学校の時は、ぼろぼろになって、ツギハギをあてたユニホームしかなかったし、中学時代も硬式なのに軟式用のグラブを使っていた。本人は口にはしませんが、小、中学校の時は、学校などでツラい目にあっていたとも聞きました。本人はそれでも下を向かず、『好きな野球ができれば』と思い続けてくれたのだと思っています」

 宮城が4歳で野球をやりたいと言った時、享さんは700円のおもちゃのビニール製グラブしか買い与えることができなかった。使いやすく柔らかくしてあげたいという親心から電子レンジで温めたら、ドロドロに溶けてしまった。それでも宮城はグッとこらえ、泣かなかったという。

「中学3年時にU15日本代表に選ばれ、福島で行われた試合の遠征時は家に5000円しかなく、小遣いを3000円しか渡せませんでした。すると大弥はこう言ったんです。『あっちに行けば、食べるものがあるんでしょ? お金はなくても大丈夫だよ』って」(享さん)

■プロ入り直後の親孝行

 高校3年時の夏の沖縄大会は、決勝で沖縄尚学に敗れたものの、2回戦からの5試合で4完投。準々決勝、準決勝、決勝の3試合は、一人で計490球を投げ抜いた。

「決勝後は腕が思うように動かせなかったですが、それでも、1~2日したら、普通にケロッとしてました」(享さん)

 体の強さもさることながら、忍耐強さも宮城のパワーの源になっているようだ。

 そんな宮城はプロ入りしてから、家族に折を見てプレゼントを送っているという。享さんが言う。

「2019年にプロ入りが決まって間もない時に、『たまには遊びに行って』と私と妻、妹にUSJの年間パスポートをプレゼントしてくれました。これまでほとんど外で遊ぶことがなかったから、気遣ってくれたのだと思います。同期のドラフト1位には、奥川君や佐々木君、西(純矢)君(阪神)がいますけど、彼らには負けたくないはず。プロ入りした今も大弥には『プロ相手でも気持ちだけは負けるな、雰囲気にのまれるな』とよく話しています。これからも目の前の1球、1イニングを大事にして、頑張って欲しいですね」

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