中田翔は暴行みそぎ9日間で“コネ移籍”…巨人また「優勝のためなら何でもアリ」で若手スポイル

公開日: 更新日:

日本ハムは問題児放出、巨人はチーム強化

 それは、一本の電話から始まった。

 20日に両球団から電撃発表された日本ハム中田翔(32)の巨人移籍。無期限の出場停止処分を受けるに至った後輩選手への暴行問題は「無償トレード」という思わぬ形で幕引きが図られることになったが、そのウルトラCの発端は16日の夜だったという。

「日本ハムの栗山監督から巨人の原監督に電話があった。中田が後輩選手に手を上げたのが今月4日。調査を終えた日本ハムが無期限の一軍、二軍全試合出場停止処分を発表したのが11日のことです。それを受け、栗山監督が初めて中田の暴行問題に言及したのが16日でした。栗山監督は報道陣に、『正直、このチーム(で復帰すること)は難しい』と語り、かといって『(他球団に獲得を)お願いします、というものでもない』と続けた。スポーツ紙は<中田 放出>と書き立てたが、裏ではその日の夜に人生の師と慕う原監督に直電し、中田の獲得をお願いしたわけです」(球界関係者)

 原監督はすぐに巨人首脳に相談。球団幹部にも「ひとりのプレーヤーとしてこのまま殺しちゃダメだ。痛みを共有して、もう一度生かすんだ」と力説し、中田の獲得を進言したという。事前にチームの主将である坂本勇人(32)にも事情を説明したうえで、フォローを頼むなど“根回し”も済ませていたというから、手回しがいい。栗山監督と原監督のホットラインがあってのコネ入団みたいなものだ。

「栗山監督の『翔にはなんとか野球を続けさせたい』という親心と、それに応えて『才能ある野球人にもう一度チャンスを与えるべき』と復帰の道を用意した原監督の男気という美談になっていますが、日本ハムが問題児を厄介払いし、巨人には現実的な思惑があったのは事実でしょう。強打の一塁手として年俸3億円超で獲得したメジャー通算196本塁打のスモークが家族の問題で6月中旬に退団。首位の阪神を逆転してリーグ3連覇を果たすうえで、打線強化が絶対に必要というのが球団と原監督の共通認識だった。五輪期間中に外野と一塁を守るハイネマン(28)を緊急補強したものの、メジャーでの実績は皆無に等しく(通算68試合で打率.172、5本塁打、17打点)、当たればめっけものという程度の期待。腐っても元日本代表4番の中田が一塁に入れば、ウィーラーの左翼起用で一気に打線の厚みが増す。無償トレードで阪神追い上げ態勢が整うのだから、これ以上の補強はありません。中田獲得による批判は織り込み済みで、チーム強化を優先したのです」(前出の球界関係者)

 優勝するためならなんでもあり、という巨人の考え方を象徴する獲得でもあるというわけだ。

謝罪会見と入団会見を一緒くた「スジが違う」

 今回の中田の巨人入りを巡っては、ファンの間でも賛否が渦巻いている。ネット上では「更生するなら厳しい巨人以外にない」「現状12球団の監督を見た時に中田の手綱を握れるのは確かに原監督くらいしかいないと思う」という好意的なコメントがある一方で、「簡単に手を差し伸べるのも本人のためにならない。もう少しお灸を据えてからでもよかったんじゃ……」「仮にも無期限謹慎になっているのに移籍したから試合に出れるのは違うんじゃないか」といった巨人と日本ハムのやり方に否定的な意見も多い。

 名球会会員の評論家・山崎裕之氏は開口一番、「決まるのが早かったねえ」と驚いたうえで、こう続けた。

「あとは本人次第。反省して取り組むかどうか。次はもう難しくなるわけだから、打撃はもとよりメンタル面においても、すぐにカッとなるんじゃなく、しっかりと『間』を取って柔軟にやらないと。ただ、巨人への入団会見と謝罪会見を一緒くたにしてやったのはスジが違うというか、順序が違う。中田は日本ハムのチームメートに謝罪することなく移籍せざるを得なかったと聞いたし、日本ハムもメールで本人の謝罪コメントを出してはいるが、日本ハムの選手として会見を開き、しかるべき場できちんと謝ってから巨人へ行くべきだった。今回の一件を見てもわかるように、中田がきちんと善悪の判断ができないというなら、中田のためにも、トレードをお膳立てした日本ハムと巨人がしっかりと段取りをつくってやるべきだったと思いますね」

■たった9日間で無期限出場停止処分を解除

 野球ファンの吉川潮氏(作家)は、「中田が反省しているのはわからなくはないし、巨人がセカンドチャンスを与えるのは結構ですが……」と、こう話す。

「後輩への暴行事件はもちろん、これまでの素行が問題視されたからこそ、日本ハムは無期限出場停止処分を下し、放出を決めた。それを巨人へ移籍するからといって、たった9日間で解除するほど軽いものなのか。本当に中田を救済、再生するなら、中田自身が心身を見つめ直したり、鍛え直したりする時間が必要でしょう。今季中は出場停止であってしかるべきだし、きちんとみそぎの期間を設けたうえで巨人に入るというならまだわかる。中田の暴行事件や後輩イジリは学校だったらイジメと同じ。反省する時間がロクにないまま『許す』ことは、子供への教育的にもよろしくない。巨人も巨人で、救済という大義名分を掲げ、獲得理由も『涙ながらに反省している』と取ってつけたような美談ばかり。『日本ハムは厄介払いをしたかった』『巨人は補強をしたかった』という下心が透けて見えます。このトレードがまかり通るというなら何でもアリになってしまう。巨人は近年、沢村など問題児を放出してきたわけだし、巨人の選手も複雑ではないか」

 暴力という蛮行を抜きにしても、中田の加入で巨人の中堅、若手はチャンスを失い、成長の芽を摘まれる。原監督は21日からの一軍昇格について、「なんの障害もない」と起用する気満々だ。巨人にとっても中田にとっても決して美談で片づけられない問題をはらんでいる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  2. 2

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  3. 3

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    巨人・阿部監督に心境の変化「岡本和真とまた来季」…主砲のメジャー挑戦可否がチーム内外で注目集める

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  3. 8

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  4. 9

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」

  5. 10

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃