反町康治氏が語る新生「森保J」と日本代表 歓喜と失意のカタールW杯の舞台裏

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球際で勝ってボールを刈り取ることの重要性

 ──森保監督の続投が正式決定し、元日本代表の名波浩、前田遼一両コーチも新たに加わります。

 次のW杯まで3年半というよりも、3月に新チームが本格始動することを考えると、(W杯本大会まで)あと3年3カ月しかない。今年は3、6、9、10月の代表活動でしっかり土台を築き、11月からのW杯予選に臨まないといけない。

 となれば全てをリセットして再出発するよりは、今あるものを生かして上を目指す方がベターだし、それがFIFA(国際サッカー連盟)の世界ランク10位以内に行くということになる。(JFAの)技術委員会としては、続投がベストウエーだと判断しましたし、田嶋(幸三)会長や会長の指名した人々と話し合って決議した結果です。

 ──森保監督の続投にはファンの間にも賛否がありました。

 長期政権のマイナス面はもちろん承知しています。私自身が新潟で5年、松本山雅で8年の(長期の)監督経験があるので。私の場合は、コーチが期間中に他クラブに移籍したり、入れ替えもありましたし、勉強して新たな刺激を加えたりした。パソコンと同じでバージョンアップをしていかないといけない。森保監督にもそれを求めています。名波、前田両コーチの抜擢は森保監督の意向。名波コーチは磐田や松本山雅で監督の経験もありますし、攻撃面で良いエッセンスをもたらしてくれると思っています。前田コーチは引退して間もないので、現役に近い目線でアプローチしてくれると期待しています。

 ──今後の日本代表はどう進むべきですか?

 これからの3年間では戦い方の幅を広げ、よりインテンシティー(強度)の高い試合運びができないといけない。高強度というのは50メートルを9秒以内で走るイメージ。攻守両面で質を上げたい。個のレベルアップも必須です。今回のW杯では、サッカーは格闘技だと改めて感じた。本質である<球際で勝つ><ボールを刈り取る>ことの重要性も再認識しました。

 ですが、日本でボールを刈り取れる選手といえば、遠藤航(シュツットガルト)が突出している。アルゼンチンには5~6人いるのに、日本は1人という状況では勝てない。そこも改善の余地があります。もうひとつは若い世代の台頭です。カタールW杯全体で2001年生まれのパリ五輪世代は約10%いましたが、日本は久保建英(レアル・ソシエダ)1人だった。そこは懸念材料です。

 サッカー協会としては17歳でJリーグデビューを果たし、10代のうちにサムライブルーに昇格するというパスウエーがモデル。それに近づけていかないといけない。年末年始の全国高校サッカー選手権で4強入りした神村学園(鹿児島)のFW福田師王が(ドイツ1部)ボルシアMGへ行ってどうなるのか、なども含めて注視していきたいと思います。

■PK戦も積極的に善後策を講じていく

 ──10年、22年のW杯(の決勝トーナメント1回戦)で2度とも敗れたPK戦についても、いち早く手を付けました。

 練習以外に不可能を可能にするものはない。昨年末のU-16やU-18日本代表の試合で(予定されていなかった)PK戦を採用しましたが、やはり機会を増やさないといけない。青森山田高は「PKの成功率が90%以上」と聞いたので、(同校を1995年から率いて今季からJ2)町田の黒田剛新監督に秘訣を教わる予定も入っていますし、積極的に改善策を講じていきたい。次のW杯では日本代表が「新しい景色」を見られるように全身全霊を懸けて取り組みます。

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽反町康治(そりまち・やすはる) 1964年、埼玉・浦和市(現さいたま市)出身。静岡・清水東高から慶応大。総合職で入社した全日空の社員Jリーガーとして横浜フリューゲルス(当時)でプレー。94年に退社して、湘南とプロ契約。元日本代表MF。97年に引退、2001年に新潟監督。08年北京五輪代表監督、日本代表コーチを兼任。湘南と松本山雅で監督を歴任。20年3月にJFA技術委員会の委員長に就任した。

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