岩手のもやしっ子がパワーでメジャーリーガーを圧倒するまで

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ダルよりすごい体

 迎えた2年夏、県大会の前にお尻と太ももの付け根に痛みが走った。いつになっても痛みは消えない。診断の結果は「左股関節骨端線損傷」。体が成長し切らないうちは残っている骨端線が損傷していた。それが判明して以降、打つことはできたが、投球練習は禁止された。その間も食事トレは続けたため、翌年の春のセンバツ出場時のガイドブックには「細身の体も、昨夏より体重が10キロ増えた」と書かれている。

 中学時代、身長は急激に伸びたものの、体が出来上がっていたわけではなかった。骨端線が体に残っているうちは、まだ成長途上。医者には「体のあちこちにまだ、骨端線が残っている。本当の意味で体が出来上がるのは23、24歳かもしれない」と言われた。

 15勝を挙げて最多勝を獲得したプロ3年目の2015年1月、水沢の成人式に出席した当時20歳の大谷は、中学の同級生に「オレ、まだ(身長が)伸びてるわ」と打ち明けている。

 プロ入り後、体が徐々に出来上がりつつあるのに並行して、大谷は人一倍、ウエートトレーニングに力を注いだ。プロ3、4年目、そのむき出しの上半身を見た球団職員のひとりは「同時期のダルビッシュよりすごい体をしてますよ」と仰天。試合前の打撃練習では当時、日本ハムの主砲だった中田翔よりも打球を遠くに飛ばしていた。

 プロ4年目の16年11月、侍ジャパン日本代表メンバーとしてオランダとメキシコとの強化試合に出場。オランダ戦で放った打球は、東京ドームの右翼方向の天井に入る二塁打に。プロ野球の統一球より重たいメジャー公認球を、日本選手のだれよりも遠くに飛ばしていたのが大谷だった。

■尻回りは去年の1.5倍

「ビールの1杯目くらいはおいしいと思う」とは本人。酒は飲めば飲めるようだが、「(オフに)増量しているときは飲まないようにしている」という。イチローにしても松井秀喜にしても、現役時代から食べ物にはうるさかった。けれども大谷は、自分で取り組んでいるトレーニングを犠牲にしてまで、「好きなものを食べたいとは思わないし、そういう感じで食事はしていない」とか。

 メジャー移籍後は以前にも増して、食事やトレーニングに関してストイックになった。ひとり暮らしだからだろう。アナハイムの自宅には栄養士の作った料理が冷凍保存されていて、それを解凍して食べることが多いそうだ。洋服を着てても分かるほど筋骨隆々。二の腕なんか、女性の太ももくらいある。特に今年は下半身を重点的に鍛えたようで、「尻の回りは去年の1.5倍ほどデカくなったんじゃないか」とは現地特派員。栄養士の指導の下、良質のタンパク質やプロテインを摂取しながら、シアトルのジムなどでみっちり鍛えた成果だ。

 昨年6月のマリナーズ戦で放った16号本塁打の打球速度は時速約190キロ。メジャー5年目にして最も打球速度の速い本塁打だった。4月には自己最速を更新、両リーグを通じて3位となる約191.7キロの二塁打を放った。

 ストレートの平均球速は約156.6キロ。走ってはメジャーでも走力がトップクラスの選手がはじき出す秒速9.14メートルを2度マークしている。

 193センチ、95キロ。かつての「もやしっ子」は義経のように身軽なだけではない。屈強なメジャーリーガーの中でも見劣りしない肉体をもち、打っても投げても走ってもトップクラスの数字をたたき出すパワーを備えた選手に成長した。

【連載】大谷翔平 二刀流の源流を辿って見えた世界一への渇望

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