国内主要マラソン大会で男女ともに「運営ミス連発」の根本原因…元日本陸連競技委員長が語る

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 今シーズンの国内主要マラソン大会が終了したが、男女のレースで立て続けに運営ミスが起きた。2月24日の大阪マラソンでは、先頭集団が30キロ過ぎの折り返し地点を通過し、20メートル先まで行ってしまった。3月9日の名古屋ウィメンズでも、ペースメーカー(PM)が23キロ過ぎでコースを間違えるアクシデント。気づいた加世田梨花がPMに伝え、大事には至らなかったが、両大会は9月の世界選手権東京大会の代表選考会を兼ねており、あってはならない失態だった。多くのマラソン大会の運営に携わってきた元日本陸上競技連盟理事・競技運営委員長で、箱根駅伝審判長などを歴任した吉儀宏氏(80)に、ミスが起きた原因などについて聞いた。

  ◇  ◇  ◇

「大阪の一件は、テレビ中継車やバイクカメラに原因があるのではないか。大阪のコースは折り返し地点の先に車が曲がれるところがあったが、カメラ車は選手の息遣いやおもしろい画を出来るだけ近くで撮りたいから選手のすぐ前を走っていた。それもあって選手は折り返し地点を過ぎてもカメラ車の後を追ってしまったのです。こういうことはこれまでも何度もあり、ほとんどはテレビカメラを積んだ中継車がトラブルの原因です。中継車は折り返し地点の手前、または数十メートル先で選手と離れてUターンするのですが、混戦になると選手の表情を近くで撮りたいので、選手から離れずにいるから、PMや選手はその車やバイクについていってしまうことが多いのです」

 箱根駅伝でも中継車絡みのアクシデントがあった。

「忘れられないのは2011年の第87回大会。最終10区です。トップの早大と40秒差で襷を受けた東洋大の選手が猛追する中、東洋大の酒井(俊幸)監督から無線が入り、『中継車が間に入っているから前の選手を追えない』というのです。当時の審判長だった私は本部の車を(日本テレビの)中継車に横付けさせ『どきなさい。後ろのランナーに前を行く選手の背中を見せてやれ』と言いました。この大会の最終10区では、中継車絡みの事件がもう一つありました。10位までが来年のシード権を獲得するわけですが、ゴール近くまで8位から11位までの4人がほぼ並ぶ大混戦になった。視聴者受けするシーンですから中継車が選手にピタリとついた。すると国学院大の選手だけがコースを外れて右へ曲がった中継車についていってしまった。各大学には事前に周知していましたが、この選手は当日変更でそのことがしっかり頭に入っていなかったのかもしれません。幸いにも選手はすぐに誤りに気が付き、10位でゴールしました」

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