長嶋茂雄さんの衝撃的な偏食ぶり…スイカとメロンの真ん中の部分だけを食い散らかしていた
全体練習後に新加入の江藤の特守がメニューに組み込まれていたのだ。チーフスコアラーだった私はノックの手伝いをすることになっていた。脱ぐならここだな、と思っていたら、長嶋監督が車に乗ってサブ球場にやってきた。グラウンドに足を踏み入れ、ノックバットを持っていた私に「どうだ?」と声をかけてくる。どうだ? というのは江藤の動きではなく、ファンの盛り上がりのことだ。
「見てください、監督。今日は(ファンが)多いですよ。ここ数年じゃ、一番ですよ」
私もそう言って、長嶋監督をけしかける。
事実、サブ球場の周りには過去に見たことない人数のファンが二重、三重になってあふれかえっていた。
「んん、そうかぁ?」
うれしそうに球場を見回す長嶋監督に、
「監督、どうぞ。よろしくお願いします!」
と、ノックバットを手渡して、ダメを押した。その直後、バッとグラウンドコートを脱いだ長嶋監督に、東京ドームでの公式戦以上の大歓声が降り注いだ。傍らで見ていた私も思わず見とれてしまったが、長嶋監督はグラウンド外でもやはり特別な人だった。