長嶋茂雄さんは正々堂々勝負することにこだわった。「捨てゲーム」という概念すらなかったと思う
元巨人寮長の樋沢良信氏による「寮長が見た巨人軍」(第11回=2011年)を再公開
“燃える男”、“ミスター”の愛称で国民的人気を誇ったプロ野球元巨人監督の長嶋茂雄さんが6月3日、都内の病院で肺炎のために亡くなった。享年89。選手、監督として数々の伝説、逸話を残した「ミスタープロ野球」は、身近に接した者すべてにそれぞれの「長嶋茂雄像」を強く印象づけてもいる。日刊ゲンダイの連載で多くの球界OBが語ってきたその実像を再構成して緊急公開する。
今回は巨人での現役引退後はスカウトやチーフスコアラー、寮長などを歴任した樋沢良信氏による「寮長が見た巨人軍」(第11回=2011年)を再公開。本文中の年齢・肩書きなどは当時のまま。
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長嶋茂雄さんに怒鳴られたことがある。
あれは、99年だったか2000年だったか。試合後に、投手コーチの水野雄仁(現野球評論家)が「樋沢さん、監督が呼んでいます。監督室に来い! って。ボクも一緒なんですけど、なんか悪いことしたんですか、樋沢さん?」と声をかけてきた。当時、私はチーフスコアラーだった。「バカヤロー、オレがするわけないだろ。悪いことするのはだいたいおまえじゃないか」と2人で言い合いながら監督室に向かうと、ノックをして扉を開けた瞬間、いきなり怒声が降ってきた。