期待の新人・落合博満が突然「大学を辞めたい」…兄と姉を呼び、3人がかりの説得は深夜に及んだ(上)

公開日: 更新日:

 1972年4月、秋田工から入学してきたのが落合博満だった。

 打撃センスは飛び抜けていたものの、体が弱かった。故障が多く、守るポジションもなかった。

 当時、わたしは監督就任1年目。体を鍛えながら、じっくり育てれば必ず良い選手になる。やがては野球部を背負っていく逸材だとみていた。

 ところが、その年の9月。秋のリーグ戦が始まる1週間くらい前のことだ。落合が突然、「大学を辞めたい」と言ってきた。

 わたしは当時、合宿所暮らしだった。部屋に入ってすぐ両脇に2段ベッド、その奥に机4台と数人が話せるちょっとした空間があった。4人部屋をひとりで使っていた私は練習終了後、そのスペースに本人、落合の兄姉を招き、4人で話をした。

 合宿所はまだ完成して間もなかった。床は茶色のフローリング。ニスのにおいが、つんと鼻をついた。

 落合の実家は秋田で煎餅店を経営していた。ところが、オイルショックで工場を閉めることになったという。

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