著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

“ジレンマ”抱えるトランプ主導の「平和評議会」と「IOC」の決定的違い

公開日: 更新日:

 トランプはそれに代わる組織である平和評議会の長となり紛争を解決してノーベル平和賞を狙うつもりだ。加盟国は議長が招待した国家に限定され、各国は元首・政府首脳が代表する。任期は原則3年だが、本憲章発効後1年以内に10億ドル超の現金拠出国は任期制限なし。意思決定は加盟国過半数に加え議長承認を要し、執行理事会の決定も議長が事後に拒否できる。つまりトランプの意図した通りの新「国連」ができるというわけだ。

 近代政治は国家を基軸とせざるを得ない性がある。平和評議会の基盤も国連と同様に国家利益の闘争と調整の場にならざるを得ないだろう。同じ穴のムジナだ。なぜなら両者とも国民国家主義(ナショナリズム)を大前提としているからである。

 国家を前提としつつ、そのナショナリズムを利用して世界平和構築を目指す以外にこのジレンマを超克する方法はない。実はそれを実現している「国連」がある。国際オリンピック委員会(IOC)だ。この機関は理念に賛同した個人がIOC委員となり、そのオリンピック理念を伝える五輪大使となる。国連が国家を代表して派遣される国連大使の集まる場であるのと逆構造だ。五輪大使が代表するのはオリンピック精神であり、それを各国家に伝えるのだ。オリンピック競技大会に集まる選手は、それぞれの国や地域の五輪運動を統括する国内オリンピック委員会(NOC)が育て、代表として五輪に派遣する。各国代表は同じルールのもとで競い合い、頂点を求める闘いの中で互いを敬う磁場を持つ。国家を背負いつつ、ナショナリズムを凌駕する。

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