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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

世の葛藤を超えた全仏の涙と笑いの幕切れ…ズベレフ悲願のVに映ったテニス界の光と影

公開日: 更新日:

 金目当てで出来るワザではないが、優勝賞金は280万ユーロ(約5億2000万円)だ。予選1回戦負けで444万円……それでも開幕前、トップ選手は増額を訴えた。全仏の昨年の収益は前年比14%増の731億円で賞金総額は9.5%増の114億円になった。問題は分配率で、ツアー賞金が収益の22%に対し全仏は約15%と低い。ATPはポイント所有者が2265人、WTAは1544人を抱え、下位の分配を厚くしなければモラル低下を招くとトップ選手たちは主張した。下部大会ではネットの普及による八百長問題が深刻なのだ。

 世界的な普及ゆえの悩みだが、こんな論争もある。男子は5セット、女子は3セットマッチ。ズべレフの7試合=18時間59分という優勝までの所要時間に対し、アンドレーワは9時間36分。賞金は男女同額だ──ミックスダブルスを起源に、男女共同で繁栄を築き上げたテニスならではの“歴史”である。

 賞金は同額だったが、表彰式は男女で違った。シベリア生まれのアンドレーワに国歌演奏はなかった。ウクライナ侵攻に対する処置で、ズべレフの式にはドイツ国歌が流れた。息子に「29年間、ツアー最長にして最高のコーチ」と称えられ破顔した父親は、ロシア出身の元選手だ──今の世の葛藤を超えるテニスの涙と笑いの幕切れ。次のウィンブルドンはどんなドラマを見せてくれるか。

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