伝説の“背面投げ”はスポーツ紙の1面を席巻 ギャンブラー小川健太郎による一世一代の一発勝負
大谷翔平にも初球からど真ん中に投じる大リーグの投手たち。男の勝負にかけるさまはまるで西部劇を見ているようだが、対照的に日本の投手は相手を封じようと工夫を凝らす。その投球で特筆の伝説として残るのが、中日のエース小川健太郎の“背面投げ”である。
ワインドアップでモーションに入ると、下ろした右腕を右腰の後ろからヒョイとホームに向けて投じる。天下の王貞治に対し、遊びでやるようなことを公式戦のマウンドでやってのけた。
1969(昭和44)年6月15日の後楽園球場。三回裏、カウント2ストライクと追い込んだ後の3球目だった。両軍ベンチ、メディア、そしてスタンドのファンは「なんだ、なんだ?」。打席の王は「えっ……」。球場全体がしばらくどよめいた。効果はあった。王は次球を打って外野飛球。六回裏は三振に終わった。
背面投げは2度ともボールだったが、タイミングを外されたのだろう。スポーツ紙の1面を席巻した超A級の話題だった。
当時の王は全盛時代で最終的に13年連続となる本塁打王を8年連続としたシーズン。小川は前年までの3年間で5割近く打たれ、8本塁打とカモにされていた。まさに天敵。キャンプで練習したこの秘球を8月と10月にも王に投げている。


















