物語人生論「心の力」が話題 姜尚中氏に聞く

公開日: 更新日:

「年間3万もの自死者が出る昨今、いまや人々は“弾の飛ばない戦争”の時代を生きています。就職先がなく雇用も安定しない若者、ブラック企業で働きづめになって年金制度も崩壊していく中高年など、未来に不安しか持てない状況下で、生き延びるために必要な『心の力』を養うヒントが、100年前の東西のふたつの物語の主人公の苦悩と生きざまの中にあると思います」

 ふたつの物語の主人公は、どこにでもいる凡庸な人間で、輝くような才能も自信も持っていない。しかしどちらの物語でも、時代の風潮に呼応して強く生きていく友人たちが死を迎えるのに対して、彼らは凡庸ながらも淡々と生き延びていく。

「物語のふたりの主人公は『こうでなくてもあれがある』『あれがなくてもこれがある』と考え、そこで自分がよいと思う道を歩んでいきました。現代の若者たちのように、会社を首になったらおしまいだとか、学校をやめたら行き場がないとは考えなかった。そして人に意見は聞きつつも、周囲に『染まらず』『洗脳されない』という特徴もありました。昨今は『代替案がない』と自ら選択肢を狭めてしまう人が多いのですが、この2著には幻想でもいいから人生を単線ではなく複線化して、生き延びよというメッセージがあるのではないでしょうか」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由