「ガタロ」ガタロ/絵、中間英敏/文

公開日: 更新日:

 広島・原爆ドームの近く、かつて「原爆スラム」と呼ばれた地域の跡地に立つ公営・公団アパート「基町アパート」。その中にある商店街の清掃員として働くガタロ氏が、仕事のかたわら描き続けてきた素描画を編んだ作品集。

 幼い頃から絵を描くのが好きで、芸大を目指して勉強したこともあるという氏だが、被爆2世で原因不明の体調不良に悩まされ、高校卒業後に勤務した印刷会社を皮切りにさまざまな職業を転々。30年前に帰郷して「最後の場所」と思い定めて今の仕事に就いたが、あまりにハードでくじけそうになり、掃除道具置き場で涙があふれてきたときに、「毎日使う道具が長年見知った友人のように思えた」という。

 モップや棒ズリ(ブラシ)、軍手、雑巾、そしてそれらを運ぶための自作の台車など、「汚い所をきれいにしていつも黙って立っているその友人たちの佇まいを、何よりも美しいと感じ」、その友人たちをモデルにした作品の数々。
 さらに、親しくしていたホームレスのS氏を描いた人物画、原爆ドームや仕事場でもある基町アパート、広島の風景など、その作品は、見る者の心を激しく揺さぶり、感情を波立たせる迫力に満ちている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」